家電メーカーの新規事業プロジェクトから考える、優れたイノベーションプロセスの4つの特徴とステージ

第1部 第8回(総集編)

 本連載「顧客のジョブから考えるイノベーション」では、クリステンセン教授の「ジョブ理論」に大きな影響を与えたといわれる「成果指向のイノベーション(ODI)」というフレームワークを中心に、イノベーションのプロセスについてご説明してきました。今回は、架空のケースを用いながら、これまでの記事のエッセンスを整理していきます。

[公開日]

[著] 白井 和康

[タグ] デザイン思考 ジョブ理論 顧客のジョブ 中核となる機能的なジョブ ジョブマッピング ジョブマップ

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「顧客のジョブ」から考える、優れたイノベーションプロセスの4つの「特徴」と「ステージ」

 イノベーションの本質とは、新しい経済価値を生成する活動です。典型的には、市場における充足されていないニーズを満たすことに役立つプロダクト/サービスを継続的に提供し、その対価として企業成長に必要な金銭を獲得するための活動を意味します。イノベーションプロセスは、他の企業活動(例.製造プロセス)と同じく、決してアドホック、一時的、運任せのものであってはいけません。したがって、優れたイノベーションプロセスは以下の4つの特徴を備えている必要があります(図1)。

  • 再現可能 – 特定の人間のひらめきや直感によって生まれるものではなく、日頃の訓練と実践を積んだ人であれば、誰もがいつの時代においても遂行できるものであること。
  • 予測可能 – 市場における充足されていないニーズをイノベーションプロセスのインプットとし、首尾一貫したプロセスを通じて、アウトプットとしてのプロダクト/サービスのコンセプトに関する市場の反応が予測可能であること。
  • 持続可能 – 突発的な発明やヒット商品を生み出すことではなく、持続的かつ長期的な競争優位性をもつ組織的な仕組みをもっていること。
  • 拡張可能 – 最も成功オッズの高い市場機会に焦点を絞ることからスタートし、中長期的にイノベーション領域を拡張していくことができる仕組みをもっていること。

優れたイノベーションプロセスの4つの特徴(図1)優れたイノベーションプロセスの4つの特徴

 上記の特徴を備えたイノベーションプロセスは、大きく4つのステージから構成されます。

  • 定義する – 顧客のジョブをベースとした長期にわたる安定した市場を定義し、その潜在的な規模と魅力度を推定する。
  • 理解する – 定義された市場におけるすべてのニーズを収集/理解する。
  • 発見する – 収集されたすべてのニーズの中から、最も成功オッズが高い市場機会を発見し、プロダクト/サービス戦略の方向づけをする。
  • 創造する – プロダクト/サービスに関するコンセプト/アイディアを創造/評価する。

 今回は、架空の家電メーカーにおける新規事業プロジェクトにおけるケースを想定し、各々のステージのエッセンスを整理していきましょう。

家電メーカーA社は、今後本格化するデジタル経済の進展に備えて、次世代の中核となる事業を育てることを目的に、少数精鋭によるプロジェクトチーム(以下、チーム)を組成しました。チームは、新規事業の中心となるプロダクト/サービスのコンセプトを3ヵ月間で生成するよう命じられました。

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