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エスノグラフィーとは大切に思う人へのプレゼント

大阪ガス行動観察研究所株式会社セミナーレポート:第4回

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問題解決、価値創出を図るプロセス「リフレーム」の重要性

 こうしたプロセスの中で、久保隅氏は「インサイトをどうやって出すか」「本質的な課題は何か」を考えることが最も難しいという。そのヒントとなる考え方として、MITのCオットー・シャーマン氏が提唱する「U理論」が紹介された。

 世界のトップクラスのリーダーがどのように問題解決を行い、新しい価値を提供していくかのプロセスを調査した結果から導出した理論もので、アパルトヘイトや環境問題などクリティカルな課題解決のための理論方法論として用いられる。U字型のボトムに「真の課題を見出す=プレゼンシング」が位置づけられ、それを見出した際に「実践」へと向かう。しかし、多くの人はそのカーブを乗り越えられずに、その手前で常に葛藤を繰り返している。乗り越えられない原因の最たるものが「先入観」であり、まずはそれを取り外し、「視座の転換」を行うことが重要になる。

U理論≒デザイン思考:問題解決、価値創出を図るプロセス▲ 図3:U理論≒デザイン思考:問題解決、価値創出を図るプロセス
引用:Sara Beckman (2010) ,Design Process と Joanne Mendel (2010) Differentiation Model をもとに作成

 その「視座の転換」をもたらすものとして、U理論の紹介者であり訳を手がけた中土井僚氏は「自覚のなかった自分と自分の状況を実感するケース」「相手の側から見た自分や相手を取り巻く状況を実感するケース」「外部環境の側から自分とその取り巻く状況を実感するケース」の3つを挙げている。そのうち2番めが、まさに「エスノグラフィック・リサーチ」がもたらすものに該当する。たとえば「シャドウイング」という手法では、相手の導線に立って追体験するが、そこで相手の思いや状況を理解することで「気付き」が得られるというわけだ。

 この気付きから、既成概念や価値をアップデートする。つまりはバイアスのかかっていたメガネを「リフレーム」するのである。そこで見えてくるのが、潜在的でこれまでは見えていなかった領域のものだ。ここで久保隅氏は1枚の絵を出し、人によって見え方が異なることを確認。また、伝聞で描いた絵に大きなバイアスが掛かっていることなどを紹介した。

 そうしたバイアスのかかったメガネをしている場合、人は仮説を裏付けるデータだけ拾ったり、相手のいうことに口を挟みたくなったり、果ては十分に聴く前にアドバイスをしたくなったりするという。その際に「リフレーム」を意識してセーブすることができれば、少しは視座を広げることができるはずである。さらに自分が見たいものしか見えないことを自覚し、現場は常に変化していることを念頭に置きながら、意識的に定期的に現場を観察し続けることが大切だ。

 講演の最後に久保隅氏は、下記のように力説した。

“私たちはさまざまな色眼鏡で物事を見ていることを自覚しなければならない。しかしながら、自分たちの価値観や考え方を頭のなかで覆すことは難しい。そこで現場に立つことで、思いもかけない“事実”に遭遇することで、自らの色眼鏡に気づき、新しい価値を見出すことができる。手法やノウハウ以上に、そのことに気づき自己内省することと、顧客を生活者として捉えることから効果的なリフレームを行ってみて欲しい”

 企業、そして自らのイノベーションがなかなか進まないと感じているようであれば、この「エスノグラフィック・リサーチ」の手法を取り入れて、今一度「当たり前」と思い込んでいる現場を見つめなおしてみてはいかがだろうか。

●スピーカー紹介(敬称略)

久保隅 綾(くぼすみ あや)氏
 大阪ガス行動観察研究所株式会社 技術開発部 主席研究員

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