IDEOティム・ブラウンが語る、AIがもたらす第四次産業革命における「デザイナーの役割」

 2018年11月2日、今年10周年を迎える慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)が開催した、KMDフォーラム2018「Journey(ジャーニー)」。デザインコンサルティングファームIDEOのCEOであるティム・ブラウン氏が来日し、「A NEW AGE OF DESIGN デザインの新時代」と題した基調講演を行った。テクノロジーとデザインの歴史を振り返りつつ、昨今台頭する人工知能などのテクノロジーがもたらす社会変革のなかで、デザイナーが今後、果たすべき役割について語った。

[公開日]

[講演者] ティム・ブラウン [取材・構成] 高橋 ミレイ [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ビジネスデザイン 事業開発 ビジネスデザイナー サーキュラーデザイン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

イギリス産業革命が生んだ「デザイナー」という職業

 講演冒頭、IDEO CEOのティム・ブラウンは、彼の友人である未来予測学者ポール・サフォーが語った、「将来の10年間を見渡すためには、過去100年間を振り返らなければならない」というフレーズを引用し、現在に至るまでの150年間のデザインの歴史を振り返った。

「1861年にイギリスで起こった産業革命によって、それ以前は手工業で一つひとつ個別に作られていた製品が、蒸気機関を動力とした工場での生産に移行しました。その当時生まれつつあった中産階級の人たちが消費するための、大量生産が始まったのです」

 現代と同様に、新技術の登場は破壊的な側面があり、伝統的な仕事の仕方を変える。その結果、畑や農場にいた労働者たちは、新たな職を求めて、騒音まみれの危険な工場に移って仕事をする。そのために、村から都市のスラムや長屋に移住する。その当時の人々にとって、技術はとても恐ろしいものに見えたのだろう。

 ティム・ブラウンは、産業革命とまったく同時期に、ロンドンに作られた、初の“デザイン会社”を紹介した。

「美術評論家のジョン・ラスキンやデザイナーのウィリアム・モリスといった非常に急進的なグループが、アーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement)を始め、将来をより良いものにして人々のニーズを満たす将来にしなくてはいけないということを考え始めました。

彼らは、すべての人々のために高品質の商品を廉価で作っていきながらも、文化や芸術などを置き去りにしてはいけないと考えました。1861年4月にこの2人と仲間たちがMORRIS AND COMPANYを作りました。まさにこの瞬間が、“プロのデザインの仕事”が始まった時だったでしょう」

 18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命以上の変革とも言える「第四次産業革命」は、機械学習・ビッグデータ・AIといったテクノロジーにより、伝統的な産業を破壊している。「デザインは、このような変革にどう応えていくのでしょうか?」とティム・ブラウンは語り、参考になる視点として、チャールズ・レイ・イームズデザインチームによる映像作品『パワーズ・オブ・テン』を会場に流した。

Powers of Ten with Japanese translation

「私の大好きなチャールズ・レイ・イームズデザインチームが提唱したことは、“時には一歩引き下がってみる必要がある”という視点です。引き下がるだけではなく、前進することによって、我々が生きている新しい文脈を理解しなければならないということです。それが彼らの映像作品で表現されています」

 デザインが現在の技術社会における大変革にどう対応することができるのか? 「A NEW AGE OF DESIGN デザインの新時代」という講演タイトルどおり、“デザインが次に何をしてくれるのかという問い”への解を、8つのポイントで語った。

ティム・ブラウン

バックナンバー