電通吉田氏に聞く、「新しい価値」を生み出すためのインプット──好奇心で情報が集まる“アンテナ力”とは

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[語り手] 吉田 将英 [写] 黑田 菜月 [取材・構成] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] ビジネスデザイン 新規事業開発 イノベーション

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なぜ人は「正解」を求めてしまうのか──「アンテナ力」と「新しい価値の創造」の関係とは?

──先日発売した書籍にも書かれている「アンテナ力」はどのようなものなのでしょうか。

吉田将英氏(以下、敬称略):一言で表すと「情報や人、チャンスが効率的に集まる仕組み」です。事業や企画を考えるたびに自分で動いて“集める”のではなく、アンテナを張って絶えず“集まる”ようにすることで、 新しい発想を生み出す余白を作ることができるのです。そして、そのアンテナの基盤となるのが一人ひとりの“好奇心”だと考えています。

 ぼくは主に「電通ビジネスデザインスクエア」「電通若者研究部」、そしてプライベートのライフワークである「考好学研究室」で活動しています。電通ビジネスデザインスクエアでは、クライアント企業の新規事業立ち上げやイノベーション創出、組織の課題解決などのお手伝いをしています。電通若者研究部では、少子高齢化が進む日本で少数派になっていく“若者”を研究し、そこでの気付きを企業や社会が新しいことを生み出すヒントとして還元する活動をしています。組織や経営の問題、若い力の社会への還元も、根源的な課題は“個人の動機をいかによい形に方向付けるか”にあると感じて「考好学研究室」で人の“好奇心”について考えるようになりました。

──その3つの活動から「アンテナ」という考えが生まれたんですね。

吉田:はい。ただ、自分としては、アンテナを張ることは、新しいアイデアを生み出す上で無意識に採り入れていたことでもあります。今回ぼくが普段やっていることを書籍としてまとめた理由のひとつに、現代の日本にはすぐに“答え”を求める人が増えていることへの危機感がありました。

 「これだけ読めば大丈夫」という情報が氾濫し、読者も「これさえ読めばもうその事については考えなくていい」と思考停止してしまい、ますます即物的な情報を求めてしまう。“わかりにくくて面白いもの”がどんどんなくなっているんですね。こうした負の連鎖はビジネスの世界にも起きており、ともすると経営者や新規事業担当者といった“答えのないもの”を生み出す立場の方でさえ、「こういうときはどうしたら正解なんですか」「うまくいく新規事業ってどうすればできるんですか」と、即物的な答えを求めてしまいかねません。

 新しいアイデアや新規事業は、本来“正解”を他者がすでに持っているものではありませんよね。それなのに答えを求めてしまう。企業としても個人としても、「新しい価値」を生み出す前に“正解”を求めてしまう傾向が強まっています。この本は、イノベーションをはじめとする「新しい価値の創造」とはそういうものではないことに気付くためのものでもあります。

──アンテナを張ることで新しい価値を創造するとは、どのようなものなのでしょうか。

吉田:アンテナと新しい価値の創造の関係は図で説明できます。

 まずは個人の場合で説明しますが、縦軸が「思考の材料」で横軸が「残時間」です。考えるための「材料集め」ばかりしていると残り時間が少なくなり(左上)、短時間では材料集めができない(右下)。両者は反比例の関係です。そして、多くの人はこのグラフの内側にとどまっています。ただ、本来「新しい価値」を生み出すためにはこの図の右上を目指す必要があるはずで、そこにいたるためにアンテナを張ることが必要だと考えています。

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