事業を生む「個人の独自性」は「組織の物語」が育む──分断をつなぎ合わせる「経営」と「人事」の役割とは

埼玉大学大学院 宇田川元一准教授 × リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏【後編】

 連載「人事と経営のジレンマ」では、組織論・経営戦略論研究者の埼玉大学大学院宇田川元一准教授と、人材育成・採用・組織開発に関するサービスを提供するリクルートマネジメントソリューションズにて、HR領域における事業開発をリードする荒金泰史氏を連載ホストに迎えます。「事業開発×人事・組織開発」をテーマに、有識者・実践者との鼎談を実施し、経営変革の両輪を担う「事業開発」と「人事・組織開発」それぞれの役割、両部門が共同して行うべきこと、部門を跨いでのみしかなし得ない経営変革に必要な要素とは何かを探索します。
 現代企業における人事や組織の問題点を語り合った前編に続く後編では、事業開発における人事や経営の役割にまで発展した対談内容をお届けします。

[公開日]

[語り手] 宇田川 元一 荒金 泰史 [取材・構成] 西山 武志 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 企業戦略 組織変革 ナラティブ・アプローチ

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「分断されてしまったものを再度つなぎ合わせる」のが経営や人事の仕事

荒金泰史氏(以下、敬称略):ここまで(前編参照)は、主に「人事・組織開発」に焦点を当てた議論を展開していただきました。その流れを引き継ぎつつ、ここからは「事業開発」にフォーカスした話ができたらと思っています。

宇田川元一氏(以下、敬称略):僕は「事業」というものについて、最近強く思うところがあるんですよ。

荒金:それは、一体どんなことでしょうか?

宇田川:たとえば、ヤマト運輸で宅急便の事業を立ち上げた小倉昌男さんは、当時の宅配の理不尽なやり方に憤りを感じて、自分で宅急便を立ち上げました。また、その際に、規制緩和を求めて国を相手に戦いもしました。社会課題を出発点として、それを解消するための事業をどう成立させるか、戦略を練って実行していった結果、今のヤマト運輸があるんです。

 これはほんの一例で、80年代に世界中から評価されていたような日本企業の多くは、真剣に「今の社会に足りないこと、これからの世界に必要なものは何だ?」との視座を持って、ビジネスに臨んでいたように見えます。

荒金:当時はアメリカでも、日本の企業文化の研究が盛んに行われていたのですよね。

宇田川:こうした過去の事例を踏まえて、僕が今を生きるビジネスマンに言いたいのは「事業とは、捨てたものではない」ということ。ビジネスでしっかりと成果を上げてお金を稼ぐことは、とても素晴らしいことなんです。そもそも、事業とは、企業が金銭という報酬を得ることによって、持続可能な形で社会貢献するための方法なのですからね。

荒金:そうですよね。世の中に価値を提供して、喜ばれ、その対価としてお金をもらう……キレイごとのように思われがちですが、そのサイクルの中で不幸になっている人はいないし、働く人もやりがいや誇りを持てます。

宇田川:しかし、現在の社会を見てみると、本来つながっていたはずの文脈が至るところで分断されている。企業活動と対立するような構図で「働きやすさ」や「幸せ」が語られていたり、「会社」と「個人」の対立を煽ったり……僕は、こうした現状にすごく怒っているんです。おかしいでしょ、って。

 たしかに、会社の中では分業化が進んでいて、社員は自分のやっていることの意味が見えにくくなっています。そこで、企業活動と社会課題のつながり、個人の働きがいが断絶しているように思われているのかもしれません。ならば、そこ矛盾がないことを様々な方法を通じて示していったり、もしも矛盾があるならばそれを乗り越えようとするのが、本来の経営の仕事ではないでしょうか。そして、それをサポートするのが、本来の人事の仕事だと、僕は考えています。

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