Spotifyやアクサ生命に学ぶ、迅速性を担保する「組織構造」とは
ダイソンの掃除機のような成功する「顧客体験」を創出するためには、常に「プロダクトオーナー」が張り付いて、仮説検証しながら失敗を重ねていくことが重要となる。ただし、その場合の注意点として、自分のやりたいことに固執しないこと、性能品質を詰め込みすぎないことがあげられる。インターネットの場合、性能満載はむしろ逆にわかりにくさにつながり、体験価値は低下する傾向にある。だからこそ、チームでバランスを見ながら考えていくことが重要であり、デザイン思考、UX、CXなど方法論と豊かな経験を持つパートナーを組むことが有効というわけだ。
パートナーとともに失敗や試行錯誤を繰り返した異質なチームが社内の中に生まれてくる。それを社内で増幅させ、考え方やスタンスを伝搬させるためにどうしたらいいのか。そこで考えるのが組織の問題だ。そのとき、グローバルで成功している企業の考え方や手法が参考になる。
たとえば、アマゾンにはチーム編成をする際に「ピザ2枚を食べるのにちょうどいい人数」という有名なルールがある。チームを小さくまとめることで、実験や開発を自己完結でできるようになっている。この単位を構造的に大きくしても崩壊しない組織にするために考え出されたのが、音楽ストリーミングサービス「Spotify」が適用することで知られている「マトリクス型組織」だ。
Spotifyは3つの都市で30以上のチームまで拡大しているが、アジャイルなマインドセットを保ち続けている。その組織の基本となるのが、全てを自己完結でまかなえる「分隊(Squads)」と呼ばれるクロスファンクショナル(多能工)チームだ。メンバーは分隊と、技術や職能ごとのグループ「チャプター」の双方に属し、それぞれのリーダーやメンバーとコミュニケーションを取る。つまり、機能別組織から職能に関する評価を受け、事業部別組織でプロジェクトにコミットし、分隊においては自己完結型で仕事を行う。評価と指示が分かれているため、一方的な圧力がなく、より柔軟で効率的な働き方ができる。
こうした考え方は大企業でも採用されており、日本でもアジャイル組織変革として「アクサ生命」が採用したことでも知られている。アクサ生命ではIT部門内を少人数のグループ「分隊(Squads)」に分け、各グループをビジネス部門の組織と1対1で対応させる「部族(Tribe)」と名付けた。そこでは自己完結型で企画から開発・実装・テストまでを行っていくため、スピーディな開発・実施が可能になる。
片岡氏は、「インターネット時代には、予測不能とも言われるほど様々な変化が伴い、企業は常に対応していくことが求められる。そのためにはスピードに対応できる組織づくりを考えるべきであり、そうした組織にしていくためにも、パートナーとの小さなプロジェクトチームから始めるのは有効ではないか」と繰り返した。