なぜ目の前にある「データ」をすぐに“いじりだす”のか
──なぜ多くの企業は、二つ目の作業から始めてしまうのでしょうか。
柏木:主な原因は「解くべき問題が明確になっていないこと」と、とりあえず目の前にはまず作業を始められる何かしらのデータと作業環境があることです。その状態でデータ分析を始めると、定義した問題とデータが一致せず、導き出される結論と行動が間違ったものになります。データ分析から始めてしまう人は、「目の前のデータを適切に加工すると、何か有用なものが見えてくると思っている」と考えています。
柏木:企業研修の中で、データ活用のレベルは三つあるなということを理解しました。一つ目は「グラフありき」で、関係しそうなグラフをかき集めてそこから何が言えるかを考える状態です。二つ目は「データありき」で、グラフそのものを集めるよりは進歩がありますが、とにかく関連しそうなデータからグラフを作成して、そこから結論を導いているので、結果は一つ目と大差がありません。そして、私が今回の著者で「データ分析・活用」はまずここから始めようと提唱しているのが、「目的ありき」です。
この「目的ありき」でデータ分析・活用を開始するためのプロセスを以下にまとめました。
柏木:今の段階で、このプロセスの詳細はわからなくて大丈夫です。概ねこのようなプロセスを辿るぐらいで結構です。
このBとCのプロセスは、さきほども話題にした「データから始めてしまう」ことの真逆の発想で、「データを使って一体何を知りたいのか」「それがわかると何が良いのか」を具体的に定義します。また、その結果生じる「定義した問題と使っているデータが一致しない」ことがないように、指標を特定します。
まずは、最初のプロセス「目的・問題定義」(BとC)に関して、多くの企業で課題として挙がる「働き方改革」関連の話題を例に説明していきましょう。
目的(B)を「有給取得日数の改善」として、その指標(C)を「有給の取得状況の状況」とした企業があったとします。この設定は正しそうですが、間違ってそうですか?
──うーん、正しそうに感じますが、何か具体性に欠くというか、あまり次の作業のイメージがわかないですね。
柏木:そのモヤモヤを私なりに解説するとポイントは二つあります。まず目的部分の、「改善」という言葉です。目的部分の言葉に具体性がないと、改善という言葉に対して複数の解釈が出てしまい、選ぶ指標がそもそも違うという問題を発生させます。「改善」という言葉一つを取っても、「もっと多くの人に有給を取ってほしい」のか「一人当たりの有給取得日数を増やしたいのか」「連続した日数を取得しやすいようにしたいのか」まだまだ解釈の余地が残ります。その認識によって、見るべきデータも変わってくるはずです。