4つのデザイン思考における「意味のイノベーション」──人や社会に奉仕する21世紀型のデザインとは?

ゲスト:モバイルクルーズ株式会社代表取締役/De-Tales ltd デイレクター 安西洋之氏【前編】

 連載「デザイン・アート・ビジネスのトライアド」お二人目のゲストは、モバイルクルーズ株式会社代表取締役/De-Tales ltd ディレクターの安西洋之氏。著書『デザインの次に来るもの』や監訳・解説を担当した『突破するデザイン』の中で語られている「意味のイノベーション」や「デザイン思考」を中心に議論しました。前編では、ビジネスにおける「デザイン思考」をめぐる状況と「意味のイノベーション」が求められている理由などについて語りました。

[公開日]

[語り手] 安西 洋之 増村 岳史 [取材・構成] 大矢 幸世 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] デザイン思考 センスメイキング 意味のイノベーション

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4つのデザイン思考における「意味のイノベーション」とは

増村岳史氏(アート・アンド・ロジック株式会社 取締役社長、以下敬称略):安西さんとは先ほども、ある企業で講演してきたところですが、ご一緒するようになって2年ほどになりますか。

安西洋之氏(モバイルクルーズ株式会社 代表取締役、以下敬称略):そうですね。ちょうど私が『デザインの次に来るもの』と『突破するデザイン』を出版して、どうも世の中のビジネスにおけるデザインとアートをめぐる議論が“いびつ”になってしまっているなぁ、と感じていた頃、増村さんとお会いして、意気投合したんです。「一般の方も絵を描けるようになることで、さまざまな知覚や気づきが得られる」という増村さんの活動も存じあげていましたが、今だからこそ一緒に何かをやれるタイミングじゃないか、と。

増村:「デザイン思考」とか「アート思考」とかいろいろと言葉はありますが言葉だけで捉えられてしまうと危ういのも確かですよね。

安西:中世まで時代をさかのぼれば、カトラリー職人や家具職人、画家など、それぞれに得意不得意をあったろうけれど、基本的には職域を超えて、同じ工房で作業をしていた。それが19世紀に入り、欧州で「芸術のための芸術」を掲げ、純然たるものとしてファインアートが生まれた。アートの世界がファインアートと応用美術に分かれ、ある種、職人たちが「格下」と見なされるようないびつな世界になってしまったと思います。

 応用美術にはクラフトやデザインが含まれるけど、アルティザン(職人)はものをつくるだけでなく、行動規範や行動も包括した方が話は分かりやすくなります。中でもデザインは爆発的に発展してきた産業と共同歩調をとることになったツールですから、ビジネスと接続しているわけですが、本来はアートとデザインは同類とみないと全体が見えてこないです。

 そして「デザイン思考」ですが、ミラノ工科大学の研究プラットフォームであるDesign Thinking for Businessでは、デザインシンキングを以下のように分類しています。IDEOが提唱しているデザインシンキングを「クリエイティブな問題解決」とし、それに加えて、「デザイン・スプリント(Design Sprint)」と「クリエイティブ・コンフィデンス(Creative Confidence)」「意味のイノベーション(Innovation of Meaning)」を含めてデザインシンキングとまとめています。

 クリエイティブな問題解決とデザイン・スプリントはテクノロジーを媒介として新たな問題解決を図るのによく使われるアプローチですが、クリエイティブ・コンフィデンスと意味のイノベーションは、センスメイキング的なアプローチで、その名のとおり「意味」を形成する。その際の意味とは、ビジネスだけでなくソーシャルイノベーション領域まで対象とするものとなり、どちらかといえば新規事業や長期戦略に適したアプローチです。そしてミラノ工科大学のロベルト・ベルガンティ教授が提唱する「意味のイノベーション」は、これまでにない「意味」を創造したり再発見し、新たなビジョンや解釈を提案することなのです。

安西洋之モバイルクルーズ株式会社代表取締役/De-Tales ltdディレクター 安西 洋之氏
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。国際デザイン学会4D Conference のGeneral Chairs。

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