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ソニー斉藤氏が語る、事業をWHYで考える「想像力」と「良い失敗の条件」──市場を創造する事業とは?

ゲスト:ソニー株式会社 R&Dセンター 事業探索・技術戦略部門 副部門長 斉藤博氏

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新規事業の鍵を握る「経営者のコミット」と「アイディエーションへのワクワク感」

INDEE Japan 津田真吾氏(以下、敬称略):先日、Relic北嶋貴朗さんとクリステンセン教授の著書『繁栄のパラドクス』や『ジョブ理論』を題材にしながら、市場創造型イノベーションとは何かについて、起点となる「顧客のジョブ」や「無消費」などを考える対談を行ないました。

 その対談で、多くの日本企業が持続的イノベーションと効率化イノベーションばかりになってきている中で、『繁栄のパラドクス』でソニーが事例として挙げられおり、今後、どのような市場創造型イノベーションを実現するのだろうかという話になったんです。斉藤さんは現在、R&D部門のマネジメントをなさっていますが、その前は新規事業部門にいらっしゃいましたね。ソニーの新規事業部門では、将来の核となる大きな市場に向けた事業を期待されると思いますが、どういった進め方をなさっていたのでしょうか。

ソニー株式会社 R&Dセンター 事業探索・技術戦略部門 副部門長 斉藤 博 氏(以下、敬称略):1年前まで5年間、新規事業部門におりました。前社長直轄の部門で、「スピード感を持つように」とは言われましたが、どの事業領域か、どのぐらいの売り上げ目標かなどは一切限定されていませんでした。他社の新規事業担当の方々と話していて気づいたのですが、社長直轄の部署でも、実際には経営者のコミットを感じられない場合も多いようですね。その点で、恵まれていたなと思います。

津田:クリステンセン教授は『繁栄のパラドクス』の中で、市場創造型イノベーションにおいて重要な原則を5つ挙げていますが、その中の1つが「経営者のコミット」です。社長直轄の部署だということで、この原則に当てはまっていますね。

 しかし、当時の社長の平井さんは何に関してスピード感を持つようにおっしゃっていたのでしょうか。社長がスピードを求めると、多くの企業の場合、社員は事業化のための売り上げの確保や利益化に対してのスピードを求められていると捉えそうです。

斉藤:商品やサービスを導入することのスピードについて良く言われました。その他は社長から具体的に指示があったわけではなかったので、プロトタイピングや仮説検証のスピードを早めよ、ということだと解釈してやっていましたね。結果、5年の間に全く違うテクノロジーを活用した新しいプロダクトを5つ出すことができました。

津田:アイディエーション、プロトタイプ、仮説検証等の新規事業開発プロセスの中で、どこに一番ワクワクしますか?

斉藤:圧倒的にアイディエーションです。クリステンセン教授の『繁栄のパラドクス』や『ジョブ理論』でも、未解決の顧客のジョブを発見する際に、「異なるレンズ」で見ることが重要だと書かれていますよね。見ていることに対してモヤモヤが残る場合、「実はこうじゃないか」と考えていて、固定観念を脱して考え直して「ああ、こういうことか!」と気づく瞬間が非常に楽しいです。でも、新規事業を担当している方でもアイディエーションの楽しさを味わえている人は少ないと感じます。

津田:なぜなんでしょう?

斉藤:おそらく日本では、新規事業と言いながらも、実際には持続的イノベーションと効率化イノベーションにばかり取り組んできたからでしょう。常に課題解決のソリューションを考えることばかり求められていれば当然ですよね。課題自体が何かを考える機会が圧倒的に少ないんですよ。

 『ジョブ理論』にもミルクシェイクが売れない場合のことが書かれていますよね。もっと売れるようにするためにはどうするかというHOWを考えるのではなく、そもそもなぜ売れないのかとWHYを考えることが必要だ、と。でもどうしても、価格を下げることやCMを増やすというHOWを考えてしまうんですよね。

斉藤博斉藤 博氏(ソニー株式会社 R&Dセンター 事業探索・技術戦略部門 副部門長)
ソニー入社後、商品企画業務や海外でのマーケティング活動に従事。カメラ事業やゲーム事業等で多岐に亘る商品の企画を統括した。特に、ミラーレス一眼NEXシリーズやPlayStation® 4など、新規性の高い商品の立ち上げを多く担当。その後、社内起業家(イントラプレナー)として社長直下の新規事業プロジェクトを牽引。現在は同社R&Dセンター 事業探索・技術戦略部門で副部門長を務める。

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WHYで考えるために必要な「想像力」とは

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