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なぜ新規事業の事務局は疲弊するのか──事業創出特化型SaaSで工数削減に成功したドコモの“次の一手”

ゲスト:株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 金川 暢宏氏、服部 和也氏、株式会社Relic 代表取締役CEO 北嶋 貴朗氏

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 変化の激しい時代に、新規事業創出を目指して取り組みを進める企業が増えている。しかし、3年ほどでその取り組みが失速、頓挫してしまうことも多いのが現状だ。新規事業創出プログラムを円滑に行うには、どうしたらいいのか。NTTドコモで新規事業創出を目的としたプログラム39works®を運営する金川 暢宏氏、服部 和也氏と、新規事業創出やイノベーション共創に最適化したSaaS型イノベーションマネジメント・プラットフォームThrottleを手掛ける株式会社Relicの代表取締役CEO、北嶋 貴朗氏に編集部が聞いた。

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新規事業創出プログラムの事務局の膨大な運営工数とは

──NTTドコモの新規事業創出プログラムの概要と体制を教えてください。

服部 和也氏(株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 グロース・デザイン担当 担当課長、以下敬称等略):新規事業創出プログラムとしては、R&D社員向けの39worksと、全ドコモグループ社員が応募可能な事業公募制度docomo LAUNCH CHALLENGE(以下、LAUNCH CHALLENGE)があります。前者は6年前、後者は3年前に取り組みを始めています。39worksは、年間を通していつでも提案可能ですが、LAUNCH CHALLANGEは、毎年4月から12月までの間でプログラムの実施を行い、1月から3月までは事務局の運営振り返りの期間に充てています。

 LAUNCH CHALLENGEは、1回目はコアメンバー3名で事務局運営をしようとしましたが、どうにも対応が追いつかず、2回目は事務局運営に加え、応募者とのコミュニケーションを密にするために、4名追加して7名で対応しました。今年度開催した第3回では、再度3名にて運営しております。

服部和也服部 和也氏(株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 グロース・デザイン担当 担当課長)
大学院(電子)卒業後、株式会社NTTドコモに入社。第3世代の携帯電話基地局制御装置の開発に携わり、その後携帯電話ネットワークの計画・運営に従事。2017年から、社内新規事業創出プログラム「39works」の事務局として活動し、同2017年にドコモグループ社員向け新規事業創出プログラム「docomo LAUNCH CHALLENGE」を立ち上げ。

──外部支援者への協力依頼はなさったのでしょうか?

金川 暢宏氏(株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 事業創出・投資担当 担当課長、以下敬称略):社外メンターとしては、第1回が2名、2回目からは3名にお願いしています。事務局運営に関しては、新規事業支援を専業になさっている会社さんに、アウトソースする選択肢もありました。けれど、これまでの39worksプログラム運営の経験から、極力私たち自身でプログラムの設計と運用を行い、その結果を受けてアウトソースをしていく方が、結果として、自分たちにあった良いものができると考えていたため、自分たちで実施しました。ただ、やってみたらメンバーのほとんどの時間が、事務局運営に取られてしまうという問題が出てしまいました。

服部:第1回は急きょ開催することになったので、システムを検討する時間もなく、応募者と事務局のコミュニケーションはエクセルとメールで行いました。NTTドコモグループの社員は全体で約27,000人いて、グループ全体だとメールシステム上でしかコミュニケーションが取れない人がいたからです。

 また、応募された全てのアイデアに、フィードバックを返すことにしていました。第1回は、フィードバックに対して返信がくれば、さらにフィードバックを無制限に返していたんです。3、4往復する案件もありました。

──第1回のdocomo LAUNCH CHALLENGEは、どのぐらいの規模感だったのでしょうか?

服部:300アイデアくらいですね。複数回のフィードバックがほとんどで、結果的に600を超えるやりとりをしました。メールでのコミュニケーションは、やりとりを遡って確認する必要もあります。土日も返上して、メールを返信しなければならない事態になりました。

金川:全社にこの取り組みを広めていくために、全員へのフィードバックが有効だという思いがありました。それで全員にフィードバックを無制限にしたのですが、社外メンターにご意見をいただくのもあって非常に工数がかかりました。

服部:加えて、社外メンターへアイデアの資料を効率的に共有できる社内システムがなく、300ものアイデアの資料共有にも労力がかかっていました。それを力技でなんとか乗り切ったのが第1回です。第2回でも全件フィードバックを実施しましたが、回数を1回のみとすることにしました。しかし、それでも多くの稼働が発生しました。プログラム運営上の課題と、社内システム上の課題の2つがあったんです。

金川:第1回、第2回は、これにより、応募者と密な関係性を構築できたのは事実です。しかしながら、このやり方はあまりにも手がかかり、持続可能ではないことに気づきました。そこで第3回では事務局運営の仕組みを変え、システムを導入し、プログラム自体の設計も変えました。今年度開催した第3回では、応募されたものに、自動的にフィードバックを返すのではなく、応募者が自らの意思で社外メンターに相談できる「オープンオフィス」というものに変更しました。やる気のある応募者を中心に、丁寧なフィードバックができるので、結果として良かったです。

タイトル金川 暢宏氏(株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 事業創出・投資担当 担当課長)
大学院(建築)卒業後、NTTドコモに入社。自動車関連新規事業部門を経て、携帯電話の商品企画に従事。2011年から、スタートアップとの連携によるオープンイノベーションに関わり、その後、顔パス決済サービスを社内起業。「39works」および「docomo LAUNCH CHALLENGE」の事務局・アクセラレータを経て、2019年4月より39works 発のプログラミング教育サービス「embot」および、オフィスへのアート導入支援サービス「ArtScouter®」の事業化を担当。プライベートでは、「渋谷区100人カイギ」などのコミュニティ運営を行う。

──新規事業は長期で取り組まなければ価値を生みません。しかし、2、3年で取り組みが失速してしまうのには、経営陣の無理解だけが理由ではなく、事務局や関係者の労力がかかりすぎることによる、現場の疲弊もあるように思います。効率化が必要ですよね。

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新規事業プログラムの事務局が、本来すべきことに集中できるために

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