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ソニー斉藤氏が語る、事業をWHYで考える「想像力」と「良い失敗の条件」──市場を創造する事業とは?

ゲスト:ソニー株式会社 R&Dセンター 事業探索・技術戦略部門 副部門長 斉藤博氏

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新規事業に必要な「成功指標」と「良い失敗の条件」

タイトル

斉藤:新規事業はほぼ失敗するものだとお伝えしましたが、もちろんやっている人に失敗してほしいと思うことではありません。本気でやって失敗しないと何も生まれません。でも、必ず成功するという前提でいる人があまりに多い。経営陣や新規事業の責任者がそう思っていれば、その部下も必ず成功しなければとなり、最初の一歩が踏み出せません。日本は減点法で評価することが多いですが、減点法を適応される限り、新規事業は大変なんです。ただ、失敗から得られるものはあるはずなんです。新規事業部門時代は「成功の指標」の他に、「良い失敗」も定義していました。

津田:「良い失敗」の定義はどんなものですか。

斉藤:仮説検証を繰り返す中で、ここまでは仮説通りだったが、今の技術や環境だと顧客ニーズが満たせないとわかったような場合ですね。ふわっと失敗してしまうと次に何もつながらないし、経験値にもなりません。でも、何がネックでうまくいかないとわかったなら、社会環境やテクノロジーなどの要因・指標が好転した時に事業化できる。人も育つ。それが良い失敗です。

津田:今は失敗のコストが劇的に下がっていますよね。新規事業の方法論もいろいろ出てきているので、巨額の投資をして大きな失敗をするということが減ってきていますし。トライアルをしない方が損ですよね。新規事業を担当する場合は、成功か、良い失敗を目指して全力でやりたいものですね。

 最後に、斉藤さんが今気になっていること、注目していることはありますか?

斉藤:最近いろいろな業界の人、国内外の人と話していて思うのですが未来のテクノロジーに対してワクワクしている人が非常に少ないんです。分断や格差を真っ先に口にする、ディストピア的な見方をする人が多いと感じます。全てにおいて経済が優先される状況に疑問を持つ人も多いですよね。

 もう少し身近な話だと、個人が技術にエンパワーされた結果、良い面もあるけれど、個人が社会やコミュニティを破壊する力も大きくなった面もあります。テクノロジーをポジティブに社会に着地させるために、ソニーのような会社がどう関与できるか。そんなことを考えるとワクワクします

 また、ソニーは生活必需品よりは、「あると楽しい」という製品やサービスを出してきた企業です。そういう意味で、楽しみの種類を増やしたいなと思いますね。映画をいろんなデバイスで見られる、という方向ではなく、「映画、音楽、本、○○」の○○に該当するものを増やして、世の中にワクワクの量と質を増やしたいですね。

津田:話を聞くだけでワクワクしますね。今日はありがとうございました。


【クリステンセン教授対談『無消費を起点とした「市場創造型イノベーション」──大企業で“説明責任の呪縛”を回避し実践するには?』】を読む


【クリステンセン教授・著『繁栄のパラドクス』目次】

繁栄のパラドクス

[第1部 市場創造型イノベーションのパワー]

  • 第1章 繁栄のパラドクスとは
  • 第2章 イノベーションの種類
  • 第3章 苦痛に潜む機会
  • 第4章 プル対プッシュ――2つの戦略

[第2部 イノベーションと社会の繁栄]

  • 第5章 アメリカを変えたイノベーション物語
  • 第6章 アジアの繁栄
  • 第7章 メキシコに見る効率化イノベーションの罠

[第3部 障壁を乗り越える]

  • 第8章 イノベーションと制度の関係
  • 第9章 なぜ腐敗は「雇用」されつづけるのか
  • 第10章 インフラのジレンマ

[第4部 イノベーションにできること]

  • 第11章 繁栄のパラドクスから繁栄のプロセスへ
  • 巻末付記/おわりに/謝辞/日本語版解説

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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