新サービスをトップシェアまで押し上げて気づいた日米マーケットの違い
畠山:サイバーリンクは台湾の企業ですよね。どのような企業なのでしょうか。
Hilda Peng氏(サイバーリンク株式会社 ゼネラルマネージャー、以下敬称略):私たちは、動画再生ソフトPowerDVDや動画編集ソフトPowerDirectorなどのソフトウェア開発を行っている会社です。台湾では鴻海精密工業(ホンハイ)やスマホメーカーのHTC、PCメーカーのAcerなど、ハードウェア企業の方が有名ですが、私たちのようにソフトウェアに特化した企業も増えてきています。1996年に設立したCyberLinkは、1998年には日本法人立ち上げ、1999年にはアメリカ法人も立ち上げています。主力商品のPowerDVDは2006年から、PowerDirectorは2016年から日本でトップシェアを獲得しています。これは台湾ではもちろんもっと早いですし、実はアメリカでも日本より少し早い時期からトップシェアを占めるようになりました。
畠山:日米台でトップシェアということですが、市場へのアプローチ戦略としてはいずれも同じだったのでしょうか。
Peng:台湾とアメリカでは、PCにプリインストールしてもらうためのバンドル先を開拓し、その後コンシューマー向けで展開していきました。しかし、日本では逆で、コンシューマーで売れたことを背景に「PCにバンドルしませんか」という営業を展開しています。日本の企業は、アメリカや台湾と比べて実績を求める傾向にあります。バンドルビジネスを成立させるための実績として、コンシューマー向け製品の成功が必要だったのです。
畠山:確かに、ソフトウェアの不具合は、日本では致命的な問題になりがちですね。だから「安定して稼働している数」という実績が重要視されるのだと思います。
Peng:そうですね。一方でアメリカのメーカーは「我々のPCは最新の技術をサポートしています」と言いたいので、実績よりも技術的な価値を重視します。もちろん日本でも新しいテクノロジーを求められますが、それに加えて安定性や完成度、そしてそれらを保証する実績が重要視されるということです。