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デザインリサーチ再考

生活者リサーチ“不要論”の背後にあること──アイデア発想やデザインに繋がらない4つの課題とは?

第1回

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 明確な答えのないこの時代、新たな価値を創出するために、何かしらの生活者リサーチを起点にしたプロジェクト(以下、PJ)に実際に取り組んだことのある人もいまや少なくない。しかし、こうしたPJを実践した際によく聞こえてくるのが、「生活者リサーチをしてもいいアイデアが出ない。具体的な製品やサービスのデザインにまでつながらない」といった声だ。  生活者リサーチがいいアイデアにつながらないのが、単にPJメンバーの発想力だけの問題であれば、さまざまな発想法の導入や、発想を活性化させるメンバーの投入が効果的だろう。しかし、そこまで単純な話ではない。本コラムでは、「生活者リサーチがアイデア発想・その後のデザインにつながらない」という問題を紐解いていく。筆者は、デザイナーを経験後、リサーチの可能性に心惹かれてリサーチ業界に飛び込んだ一人だ。デザイナーとリサーチャー、それぞれの現場での実務経験を踏まえ、この「リサーチが発想・デザインにつながらない問題」を考察していきたい。

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リサーチ自体が問題なのではなく、アイデアの素にならないことが課題

 本来であれば発想の起点となるはずの生活者リサーチ。それがアイデア発想やデザインにつながらない・使えないという問題に対して、マーケティング・リサーチャー、デザイナーなどにおける実際の現場の声はどうなのか。

リサーチャーA:生活者リサーチをおこなったが、ありきたりなアイデアしか出ないと言われることが多く困っている。生活者視点でのアイデアなので、間違ってはいないはずなのだが……。

デザイナーX:リサーチャーによる生活者リサーチは、そのままでは発想やデザインには使えない。例えば、自分で街を歩いたり、ユーザーを見たりしているほうがアイデアは浮かぶ。そういうインスピレーションがわかない。

 このような状況において、「生活者リサーチ自体が不要なのでは?」というリサーチ不要論も言われる。しかし、ここで注意したいことは、デザイナーも、生活者リサーチ自体が不要と言っているわけではないということである。実際、彼らもデザインを考えたり発想を得るにあたって、フィールドワークに出て人のリアルな状況・行動を観察したり、必要なインタビューを実施したり、リサーチをおこなっている。生活者リサーチ自体が不要なのではなく、現状、多くの生活者リサーチ結果が、発想やデザイン(対象物のあり方の再構築・再設計)の素材として使えるものになっていない、ということがどうやら問題の本質のようだ。

 では、発想やデザインの素材として使える、つまり、アイデアを生み出すのに必要な情報を生成するには、どうすればよいのか。今回は、データ収集におけるポイントを見ていくこととする。

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デザインリサーチでは「ターゲットの実態」だけを調査してはいけない

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この記事の著者

森 あゆみ(モリ アユミ)

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