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第二創業~両利きの経営の先へ

「両利きの経営」による第二創業が必要な理由──過剰適応によるサクセス・トラップと組織能力とは?

Vol.1-1:アクション・デザイン代表 加藤雅則氏、慶應義塾大学院 特任教授 梅本龍夫氏

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 「失われた30年」を経てなお、新たな柱となる事業を創出できずにきた企業は今、コロナ禍でいよいよ「第二創業」の必要性をひしひしと感じているのではないだろうか。そのような企業にとって教科書となるのが、チャールズ・A. オライリー&マイケル・L. タッシュマンの『両利きの経営』である。  本連載では、オライリー教授の日本における愛弟子で、日本の大企業でエグゼクティブ・コーチを務める加藤雅則氏、慶應義塾大学院の特任教授で、サザビーリーグ(現ササビー)の元経営企画室長で、日本でスターバックスコーヒージャパンの立ち上げに携わった、梅本龍夫氏を連載ホストに迎え、「日本企業にとっての両利き」の経営を紐解いていく。初回は両氏の対談形式で、日本のこれまでと現状、「両利きの経営」の基本的理解のポイントを解説していただいた。

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「失われた30年」の間に第二創業を果たせなかった日本企業

──本連載では、企業のケーススタディやインタビューを通じて「両利きの経営による第二創業」を紐解いていきます。それに先立ち、お二人が現在の日本企業の状況をどのように捉えているのかお聞かせください。

梅本 龍夫氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授/iGRAM代表取締役 物語ナビゲーター、以下敬称略):第二創業について検討を始める前に、第一創業についても考えてみましょう。僕は、日本全体の第一創業の時期は戦後だと考えています。戦争で大敗し、既存の企業も含めてゼロからやりなおさなければいけなくなったタイミングです。

 僕が生まれたのは1956年ですが、この年の経済白書に「もはや戦後ではない」という有名な言葉があります。この言葉の本当の意味は一般的な理解とは違い、「戦後復興需要がなくなり厳しい時代に入る」という意味で使われました。でも、現実に起きたのはその逆です。その後も高度経済成長が続き、1964年の東京オリンピックでさらに加速した。1985年にプラザ合意で大きく円高に振るというところまでの30年間が、第一創業後の日本企業が大きく成長し、世界経済のエンジンになっていった時代だったのだと思います。

 この時期に日本的経営のすごくユニークで価値あるものが出尽くして80年代に花開いたのですが、90年代にバブルが弾けてうまくいかなくなり、どうすべきわからなくなったんですね。それでアメリカのやり方を一生懸命取り入れてみたものの再浮上できず、今に至ってしまったというわけです。

 第二創業が必要だったけれど、できないままの30年間だった。そう考えると遅きに失した感があるかもしれません。しかし、今こそ大企業も中小企業も含めて日本全体が第二創業をしなければいけないステージに来ていると感じています。

加藤 雅則氏(アクション・デザイン代表 エグゼクティブ・コーチ、組織開発コンサルタント、以下敬称略):落語のネタに「売り家と唐様で書く三代目」というのがあって、三代目は唐文字を知っていたりして教養はあるんだけど、事業はふるわず家を売りに出すことになるぞ、という意味です。梅本さんのおっしゃる第一創業期からすると、今はちょうど三代目くらいになっているわけですよね。一代目がいた85年頃までは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とチヤホヤされ、その後の停滞を経て二代目以降はどちらかと言えば効率化に走った。新しい価値を生み出せないままここまで来ちゃったんですね。

 「失われた30年」という方もいますけど、いよいよ第二創業をしないとこのままズルズルいってしまう、本当にマズイぞ、という危機感を皆さんお持ちだと思います。

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