日本企業がコロナ禍を生き残る8つの条件
「コロナの影響は、観光や外食などのローカル経済圏を襲った。先行き不安などによって車や家電等の耐久消費財を買い控えるなどという行動が起これば、製造業をはじめとするグローバル経済圏の企業は打撃を受ける。それが長引いて破綻状態の企業が増えれば、不良債権化によって金融危機にまで及ぶ可能性がある。そうなる前に、なんとか手を打たなければいけない。今はそのラストチャンスでもある。しかし、うまく対応できなければ、コロナ禍の影響はリーマンショックよりも長く続き、影響範囲も広くなるでしょう」
講演冒頭、冨山和彦氏は2008年9月のリーマンショックのことを引き合いに出し、こう語った。リーマンショックでは2年で日本経済が回復したため、企業は変革せずにある意味“凌げてしまった”面がある。しかしコロナ禍の場合、個々の企業はまずこの危機の中で生き残り、さらに構造的な変革をせずにはこの苦境を切り抜けられないと冨山氏は語る。
企業が生き残るために重要なものとして、冨山氏は以下の8つの項目を挙げる。
- 想像力:最悪を想定して、最善の準備をすること
- 透明性:悪いニュースも公開すること
- 現金預金:短期的なPL目標はやめ、日繰りのキャッシュ管理を最重視すること
- 捨てる覚悟:何を本当に残すか、捨てるか。迅速果断に優先順位を決めること
- 独断即決:経営者が衆議に頼らずに、真の「プロ」を集めて即断即決、朝令暮改できること
- タフネス:経営者が現場の声を聞きつつも、時に現場に対して厳しい判断も行えること
- 資本の名人:借りているお金と、事業が生み出したエクイティの2種類の「お金」を用意すること
- ネアカ:危機は、新たなビジネスチャンスだとポジティブに考えること
しかし、こと日本企業においては、今回のコロナショック以外にもう一つ“危機の温床”があると、冨山氏は主張する。それは平成の30年間に世界で起こったビジネス環境変化への対応が遅れていることだ。
平成元年の時点では世界を席巻していた日本企業だが、その後30年の間、世界ではグローバリゼーション(市場経済圏の全世界化)とデジタル革命の進展の掛け合わせにより、破壊的イノベーションの波が広がっていく。さらに、インターネットやスマートフォンの誕生によってデジタル分野での変革は全ての分野に波及していき、世界のビジネスでは不連続で劇的な変化が起こり続けている。
こうした中で、改良・改善を旨とし、自前主義が強く、同質的・連続的で、逆にいえば事業と組織を短期間で入れ替えて不連続な方向転換を繰り返すのが苦手な日本的経営モデルは、世界のビジネスのルール変更に対応できなかった。それが30年間の日本企業だったと冨山氏は語る。