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経営参謀としてのCFO

デュポンの前副社長が語る、ファイナンスを共通言語とした経営資源の再配分と事業トランスフォーメーション

ゲスト:東京都立大学大学院 特任教授、デュポン株式会社 前取締役副社長 橋本勝則氏【前編】

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ファイナンスと事業部の人間が同じ土俵で話せるデュポン

石橋善一郎氏(日本CFO協会 主任研究委員兼FP&Aプロジェクトリーダー、以下敬称略):橋本さんはYKKで「アカウンティング(経理)」と「トレジャリー(財務)」の経験を積み、英国子会社に赴任された後、デュポンへ移籍されました。

橋本勝則氏(東京都立大学大学院 特任教授、デュポン株式会社 前取締役副社長、以下敬称略): 当時のYKKの海外子会社では社長以下、管理畑も営業畑も工場も、トップは日本人でした。多国籍企業と言われているYKKでも日本企業の“海外支店”という側面が強かったので、当時の多くの日本企業も同じようなものだったと思います。そこで、欧米の多国籍企業はどうなのだろうと興味が湧き、今度は自分が現地社員の立場になってみようと思いました。それで、知り合いがいたデュポンで話が進み、デュポン ジャパンに入ることになったのです。

石橋:前回、この連載に出演していただいた日置さん(日本CFO協会 主任研究委員 日置圭介氏)は、日本企業における経営層のファイナンス・リテラシー不足を問題視しておられました。その点について、橋本さんはどう思われますか。

橋本:確かにデュポンでは、経理の人間だけでなく事業の責任者のファイナンス・リテラシーも高いと感じました。

 たとえば私が米国にいるときに関わったプロジェクトでは、毎年10%以上の売上の伸びが期待されるビジネスへの参入を検討しました。しかし利益率は低めで、かなりの運転資金が必要でした。拡大すればするほど運転資金がかさんでキャッシュ・フローはマイナスになっていくことが予想されていました。ですから、「利益率を上げるか運転資金を削減するような方策でキャッシュ・フローを改善しない限り、ゴーサインは出せない」という話をしたところ、プロジェクトリーダーは「わかりました」と一発で理解してくれました。

 多くの日本の会社では、売上が二桁成長を見込める事業を「やっても無駄」と言って、すんなり理解してもらえるかというと難しいのではないでしょうか。事業が成り立つかどうかをキャッシュ・フローまで見て考えているのかというと、疑問ですね。

石橋:現場ではキャッシュ・フローの話にならないですよね。デュポンでは、ファイナンスに関する教育を社内でやっているのですか。

橋本:社内で「キャッシュ・フローを勉強しましょう」ということはやっていません。むしろキャッシュ・フローなどがわかっていなければ話にならないという状況です。事業部長レベルになれば、ほとんどの人がテクノロジーや科学などの修士号の他にMBAも持っていますから、基礎的な知識はあります。なおかつ、“数字でしゃべる”ということができないと会議の会話にも参加できません。数字がわからないとリーダーになれないのです。

石橋:なるほど。他のグローバル企業と比べてデュポンのファイナンスが優れていると感じるところはありますか。

橋本:ファイナンスの人間の人事権をCFOが一括して持っている点は強みだと思いますね。FP&Aとして事業部門の支援にあたっているスタッフも、コーポレート部門直属の財務経理のスタッフも、「ファイナンスジョブ・ファミリー」と呼ばれ、ローテーションから人材育成、横のネットワーキングなど、全てをCFOがコントロールします。

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