「全く新しい金融体験」のためのインターネット証券支援事例
最後に紹介されたのは、インターネット証券の事例である。依頼の背景として、インターネット証券側は以下の3つの希望や悩みを持っていた。
- 新規でローンチしたサービスだが、提供する金融取引体験そのものが全く新しいものであるためユーザに価値が十分に伝わっていない
- サービスの開発は内製化している一方で、UXやUIに関するノウハウが社内になく、検討が進んでいない
- サービスを長く使い続けて欲しい
これに対してゆめみは、以下の3点が必要だと考えた。
- ユーザに対して新しい金融取引体験を理解しやすくするためのメタファーを発見し体験を再構築すること
- サービスデザインやUIデザインの知見をクライアントと共有しながら、改善プロセスを進めること
- ゲーミフィケーションを活用したUXを設計すること
具体的な支援プロセスとしては、これまでの2事例と同様だが、アイディエーションの段階で、ユーザが慣れ親しんだ体験を関連付けて新しい体験を捉えられるように「メタファー」と呼ばれる手法を多数検討したり、体験自体が新しいものなのでUIについては比較的保守的な、地に足のついたものを使ったり、ゲーム的に活用できる「ゲーミフィケーション」を活用したUX設計を行ったりしたことが特徴的だ。その結果、ユーザが理解しやすくなり、ユーザのUXも向上しつつ、行動データを集めやすい設計を行うことができた。
3つの事例を通して、本村氏は金融機関各社の「デジタルを活用した新しい体験への関心」が高い一方で、それを「具体化するデザイン手法を活用していない」という印象を受けているという。また金融機関ではステークホルダーがかなり多く、合意形成が難しいという特徴もあるだろうと話す。
一方で、金融機関には機会となるポイントも多いと本村氏は感じている。サービスデザインをはじめとするデザイン手法を活用していくことで、デジタルを活用した新しい体験を構想できる余地が大きいからだ。
「『ビジョン、世界観』を持って、戦略的かつ根気よくアプローチしていくことのお手伝いをゆめみができたら、と考えています」
と本村氏は語り、講演を締めくくった。