サービスデザインとDXとの関わり
デザインはDXとも大きく関わってくる。経済産業省によるDXの定義は以下のようなものだ。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0』、経済産業省、2018年
そのうちの、「顧客や社会のニーズをもとに、」「製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、」「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、」の部分はデザインが担当する部分だと本村氏は説明する。
現状、DXというと店舗業務へデジタルツールを導入したり、店舗を廃止してネットショップを開いたりといった取り組みをイメージすることが多いかもしれない。 しかし、店舗業務をデジタル化するように単にデジタルをアドオンするだけでは、店舗等の物理的なものを使うタイミングでしかデジタルが生かされない。一方で店舗を廃止してネットショップを開くなど、デジタルに置き換えるだけではタッチポイントが変わるだけである。
本村氏はDXとは既存事業への付加価値としてデジタル技術をアドオンすることでも、既存のオフライン事業をデジタルに置き換えることでもないという。顧客やユーザの行動に着目し、データとデジタル技術を活用して、オンラインとオフラインが融合した世界から最適なUXを実現するために、ビジョン、事業、ビジネスモデル全体を再デザインする必要があるものだと強調する。
ビジョン、事業、ビジネスモデル全体を再デザインするため、DXで必要になってくるのが 「デザイン経営」である。経済産業省・特許庁は「デザイン経営宣言」を発表し、推進している。
デザイン経営では、自社がどんなパーパスを掲げ、どういった人材とどのような組織文化を作っていくかというブランドに資するデザインと、それをもとにどういう体験を顧客やユーザに届けていくのかというイノベーションに資するデザインを行う。
公益財団法人日本デザイン振興会と株式会社三菱総合研究所の共同研究(*1)によると、デザイン経営に積極的に取り組んでいる企業ほど、売上成長率が高い傾向にあり、特にエンドユーザ向け企業、デジタル体験の改善に積極的な企業は傾向が顕著に表れているという。
*1. 参照元:『企業経営へのデザイン活用度調査結果発表』、永井一史、廣田尚子 監修、公益財団法人日本デザイン振興会 調査実施機関、株式会社三菱総合研究所 共同研究機関、2020年