都市銀行アプリのコンセプト策定支援のポイント
ゆめみは金融業界のDX支援としてサービスデザインを活用している。サービスデザインは前述の通り第四次産業革命以降に登場したデザインの分野の1つである。その定義は、「顧客体験のみならずその体験を継続的に実現するための組織と仕組みをデザインして、新たな価値を創出する」というものである。
アプローチする領域は、下の図の青字部分であり、顧客体験の具体化・実現の部分から企業のフロントステージ、バックステージの全般である。このうち、ゆめみが金融業界において現在支援しているのは、UXの「どんな体験が求められるのか?」に関する領域と、フロントステージ「どんな世界を構想するか?」「どんな体験を提供するか?」の領域だ。では、具体的にどんな支援を行っているのだろうか。本村氏は3つの事例を紹介した。
1つめの事例は、都市銀行のアプリにおけるコンセプト策定支援のプロジェクトである。依頼の背景として、銀行側は以下の3つの悩みを持っていた。
- 銀行にとってもっとも重要なデジタル接点であるアプリを長く使ってもらえるものにしたいが、どのように検討を進めれば良いかわからない
- 今回の改善のビジョンや方向性を、行内外のステークホルダーに対して明確に伝えられるようにしたいが根拠がない
- ユーザの行動データを取得して改善に活用していきたいが、設計方法がわからない
これに対し、ゆめみは以下の3つが必要になると考えた。
- 既存の顧客・ユーザの特性、地域性を理解した上で長期的に使われるUXを検討すること
- 顧客・ユーザだけに限らず、行内の他部署やアプリ、勘定系のシステム開発するベンダーとの連携をとること
- 新たな顧客・ユーザ体験を導きながら、その体験から取得できるデータを逆算してKPIを設計すること
そこで、この3つのポイントをプロセス設計に反映し、リサーチの段階で既存の銀行アプリにおける既存ユーザへのインタビューを実施したり、新規ターゲットや各部署のステークホルダーインタビューの設計と実施を行ったりした。そこから得られた情報をもとにターゲットペルソナを設計し、各部署のメンバーとゆめみのメンバーでワークショップを繰り返してアイデアを発散・凝縮してコンセプトとして言語化することを行った。プロトタイプでは、ターゲットがこのアプリを人生のなかでどう使い、どんな銀行体験をするのかをストーリーボードとして可視化した。さらにそれぞれの行動でどんなデータが取れるかを考え、そこからKPIを逆算して設計している。
この都市銀行では、これまであまりサービスデザインを使ったコンセプト設計をしてきていなかった。今回ゆめみが支援をすることでリアルなイメージや考え方をリサーチから得ることができ、コンセプトを可視化することができたと評価されたという。