醤油や酒の醸造を学び世界が広がった
加藤 雅則氏(株式会社アクション・デザイン 代表 エグゼクティブ・コーチ/組織コンサルタント、以下敬称略):ハナマルキさんといえば、最近の注目はなんといっても「液体塩こうじ」ですよね。いろいろな賞を受賞され、特許も取られています。
信州味噌の会社として100年の歴史があるハナマルキさんが、どうやって今までにない商品を開発し、新しい市場を創ることができたのか、読者の皆さんも気になるところだと思います。
花岡 俊夫氏(ハナマルキ株式会社 代表取締役社長、以下 花岡社長):私が入社した直後の昭和50年代初頭をピークに、味噌の需要はずっと右肩下がりです。そういう状況でしたから、何か新しい商品の開発をしないと行き詰まってしまうという危機感は当初からありました。
だいぶ前の話になりますが、当時、社長であった父から「醸造学を勉強したらどうだ」と話があり、徹底して勉強した時期がありました。もちろん、味噌も勉強しましたが、醤油についても時間を割いて勉強したんです。
味噌、醤油、日本酒、ワイン、ビール、みな同じように微生物を使っていて製造工程が共通している部分もあるのですが、実は似て非なるものでもあります。「いろんな角度で味噌を眺めてみたい」と考え、醤油を選んだのです。
加藤:それは面白い選択ですね。
花岡社長:それに加えて、洋酒、清酒メーカーなどいろいろな工場にも行きました。同じウイスキーでもブランドによって、あるいはビールでもメーカーによって製法が違う、そういうことを現場で見てきました。
私にとっては未知の分野で、工場の隅から隅まで見せていただいたことはとても勉強になりました。あのとき学び、見たことは、社長になってからもどこかに残っていました。
加藤:社長の原体験なんですね。
花岡社長:そうです。そして、塩こうじが世の中に出回ってもう40〜50社のメーカーが参入した頃に当社も始めたわけですが……。