経営メンバーに必要なダイバーシティの特徴と重要性
日置 圭介氏(ボストン コンサルティング グループ パートナー&アソシエイト・ディレクター、日本CHRO協会主任研究委員、以下敬称略):前回ゲストに迎えた入山先生(早稲田大学大学院 入山章栄教授)との議論でも触れたのですが、GEのリーダー育成は非常に参考になります。その人が組織のマネージャーになっていくのか、スペシャリストとして特定の分野を追求していくのか、それは後で選べばいいけれど、「変化対応力」と「リーダーシップ」はとにかく若いうちに身につけさせよう、という方針がはっきりしています。そのふたつは、別に部下がいなくてもできることですよね。自分でリーダーシップを発揮して前に進んでいけばいいわけですから。
中島 正樹氏(MN & Associates代表、以下敬称略):そうですね。若いうちからたくさんの経験を積ませて、リーダーに必要な行動力、「コンピテンシー」を身につけてもらうのが基本だと思います。また、企業として持つべきリーダー人材のポートフォリオを作っていく場合、多様な特性を持つ人材を確保する観点から「志向性」や「潜在的な動機」ではあまり厳格に絞り込み過ぎず、まずは一定のレベル以上の「コンピテンシー」を持つリーダー候補を育てておくことは重要です。
そしてCEOを選ぶという段階では、これが非常に重要なのですが、「次のCEOに求められる要件はこれだ」と要件定義を厳格に行って、客観的で包括的なアセスメントを実施し、その要件を満たす人を社長として選ぶべきです。
ただし、すべての要件を満たすパーフェクトな人材はいないケースが多い。その際には、足りない「コンピテンシー」や「経験」を補完できるような人材を加えて「経営チーム」を作っていくことが重要になります。
また、「動機」や「志向性」については、「経営チーム」内である程度のばらつき、多様性があったほうがいい。というのも、例えば、難しい環境においてどんどんリスクを取って突き進む人ばかりの経営チームだと、ブレーキが利かなくてちょっと危ないですよね。
日置:確かに。
中島:経営チームとしても多様性があったほうがいいし、監督を担う取締役会と執行を担う経営チームとの間でバランスが取れるということも大事です。経営陣がイケイケのときには取締役会がブレーキをかけ、足が止まっているときには「大丈夫だよ」と押してあげる、そういう関係により、経営の意思決定の精度が高まります。
日置:同感です。ダイバーシティでは、ジェンダーバランスといった属性面も大事ですが、志向性などのタスク型ダイバーシティという観点もありますよね。
中島:そうですね。ワールドクラスの企業では、ESGが議論になる前から環境や地域社会との共生の問題を重視し、学識経験者やNGO・地域コミュニティの代表など、異なる業界の多様な人材を取締役として迎えてきました。「こんな多様な人たちが取締役なのだから適切な意思決定ができるに違いない」とステークホルダーを確信させるような布陣になっていますね。