資生堂は、30年以上前から若年層肌研究やストレス研究に着手しており、これまでにも様々なストレスが肌に与える影響について研究をしてきた。今回は、GenZなどデジタルネイティブと呼ばれる現代の若者の生活スタイルに着目し、デジタル疲労が肌に与える影響について、独自の試験系を構築することで評価することに成功したという。
GenZなどデジタルネイティブと呼ばれる現代の若者は、ハイテク、ハイネットワークの世界に生まれ、インターネットが存在しない時代を知らない。統計によると、米国のGenZは、1日9時間をオンラインで過ごすとされている。デジタルは私たちの生活を豊かにする一方、デジタル情報処理の過多がストレスや疲労を引き起こし、肌にも影響を与えているのではないかと考え、デジタル疲労に着目して研究をすすめたという。
デジタル疲労と肌状態
本研究では、視覚や聴覚からの多くの情報を同時に処理するデジタル疲労課題を実施することにより、デジタル疲労状態を再現して肌状態の変化を観察。被験者に、一定時間デジタル疲労課題に取り組んでもらい、それを数日間にわたり繰り返した。
その結果、デジタル疲労課題を繰り返し実施した後には、心身の疲労感が増大するとともに(図2)、酸化ダメージ要因の一つであるポルフィリンが増加する(図3)ことを確認。さらに正常ではない角層細胞の割合が増える(図4)ことや、肌のバリア機能が悪化する(図5)ことがわかったとしている。つまり、デジタル疲労後には、肌本来が持つ肌のバリア機能が悪化し、肌荒れが引き起こされる可能性があるのだという。
デジタル疲労に有用な薬剤の探索
デジタル疲労による肌状態変化をケアするために、肌のバリア機能や保湿機能に重要な酵素カスパーゼ14に着目。カスパーゼ14は、肌のバリア機能や水分保持機能を担う角層を成熟させる働きや、角層中の水分保持に関わる天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor; NMF)の生成を助ける働きがある。今回、シークワーサーエキスにカスパーゼ14の発現を高める効果があることを見出した。つまり、シークワーサーエキスは、デジタル疲労による肌状態変化から肌を守り、健やかで美しい肌に導く可能性があると考えられているのだという。