連載・コラム アップデートする事業開発

DX時代の事業開発へのデザインアプローチ導入──アジャイル型組織での意思決定と学習サイクルとは?

第2回

 前回は、DXや新規事業における事業会社と支援会社との関わりの変化とあるべき姿についてご紹介してきました。第2回となる今回は、近年「デザイン思考」や「デザイン経営」といったキーワードで注目を集めているデザインについて考察していきます。事業開発やプロジェクトにおけるデザインの重要性、必要とされる人材、そのインストールの方法について体験談を交えながらお伝えしていきます。

[公開日]

[著] 本村 章 栄前田 勝太郎

[タグ] 事業開発 DX アジャイル型組織 コ・デザイン

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デザインに対する期待の高まり、内製と支援会社の活用

 近年、ビジネスや事業開発、特にデジタル領域においてデザインに対する期待が高まっています。2010年代からは複数の調査機関や著名人によるデザインの重要性や費用対効果を調査・分析し、レポートとして報告するケースも増えています。

 「Design ROI: Measurable Design」プロジェクト[1]やジョン前田氏による「Design in Tech Report[2]などが、海外の取り組みの代表例です。同様に、日本でも2018年には経済産業省・特許庁から共同で「デザイン経営」宣言[3]が出され、ビジネス・事業運営におけるデザインの価値と重要性が主張されています。

 さらに、2021年9月に発足が予定されている「デジタル庁」からもDX推進やデジタル社会の実現に向けてユーザビリティ、UI/UX、アクセシビリティといったキーワードへの言及[4]がされています。

 デザインに対する社会的な期待値が高まる中で、デジタルプロダクト・サービスを提供している事業会社では、積極的なデザイナーの採用、デザイン領域を担当する役員の登用などの取り組みが活発化しています。

 一方で、事業会社の内製リソースだけでは足りない部分や事業会社にとって未知の領域であるデザインアプローチの導入に関しては、そのサポートを外部の支援会社に求めるニーズも高まり続けています。このような変化に適応する形で、大手コンサルティング企業やSI企業などを中心にデザインスタジオの買収や業務提携も行われるようになってきています。

事業開発におけるデザインアプローチ

 デザインを事業開発に取り入れようとする際に重要となるのは、対象とする顧客、または、ユーザーへの理解を中心とした仮説検証を繰り返していくフィードバックループです。それぞれのフェーズで必要なスキルセットやアウトプットは異なりますが、基本的なプロセスに変化はありません。

 ここで話している基本的なプロセスを体系的に取りまとめているのが、国際規格にも登録されている「人間中心設計(Human-Centered Design、以下HCD)[5]」です。HCDプロセスをざっくり説明すると(1)リサーチ、(2)分析と発見、(3)デザイン、(4)テストから構成されます。これは基本的構造としてはPCDAサイクルと変わりありません。「顧客、または、ユーザーを中心としてプロダクトやサービスの価値をフィットさせようと試みている点」や「ペルソナやプロトタイプといった可視化を中心としたデザイン手法を活用している点」が他の検証サイクルとは異なる点になります。


[1]Antti Pitkänen「Design ROI - Measurable Design」(Issuu Jun 12, 2013 )

[2]John Maeda「2020 CX Report in 13½ minutes」(YouTube 2020/05/26)

[3]経済産業省・特許庁『「デザイン経営」宣⾔」』(産業競争⼒とデザインを考える研究会 2018年5⽉23⽇)

[4]STARTUP DB編集部『「誰一人取り残さないデジタル社会」の実現。平井卓也大臣に聞くデジタル庁のビジョン』(STARTUP DB 2021.02.10)

[5]特定非営利活動法人 人間中心設計機構「Human Centered Design(人間中心設計)」(HCD-Net 2019年7月)

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