イノベーションに必要なのは、人間への理解
イノベーションの“特殊部隊”として多くの企業を支援する、INDEE Japan。ハーバード大学 クレイトン・クリステンセン教授が立ち上げたコンサルティングファーム・イノサイトとの提携によって得られたノウハウを活かして大企業の新規事業やスタートアップの立ち上げを行う、エンジニア出身者によって生まれたスタートアップである。
イノベーションという言葉を、INDEE Japan 代表取締役 マネージングディレクターの津嶋氏は「発明(invention)×普及(diffusion)」と定義する。言い換えればそれは、未来の当たり前を創造することである。
発明や技術革新だけでなく、それが世の中に普及して人々が使い、彼らの生活が変わって初めて「イノベーション」と呼ぶことができるのです。誰もが不便に思っていて、それを解決するために必要としていて、あったらうれしいと思うものを提供できるかどうか。これがイノベーションの本質になります。
未来の当たり前を作るために必要なのは、人間への深い理解だ。「人間の気持ちや不満、人々が何に困っているのかを理解できないことには、技術を活用することはできません」。その理解は、「3つの切り口」から考えることができると彼は話す。
- 機能的:顧客が成し遂げたい用事をどのように行うか?
- 感情的:顧客はどのように感じたいか?
- 社会的:顧客は周囲からどのように見られたいか?
たとえば、ベビーシートの機能的な役割は赤ちゃんの安全を守ること。感情的な役割は、心地よく子育てをしたいという気持ちを満たすこと。そして社会的役割は、周りの人々から子供を大切にしている親だと思われたいという欲求を満たすことだという。
イノベーションと聞くと新しいテクノロジーで新しいことができるもの、つまり機能的な役割を満たすものを考えがちだが、実はそれ以上に、感情的・社会的役割を考えることが、アイデアを生み出すヒントになるのかもしれない。たとえばウェアラブルカメラのGoProは「極限の体験を記録したい、共有したい」という欲求を、メッセージアプリのLINEは「対人関係の不安はすぐに解決したい」という欲求を満たしている。「すでに普及しているイノベーションと呼ばれるものの多くは、感情的・社会的な観点から説明することができるのです」。
クリステンセン教授の言葉を借りれば、「顧客は用事(ジョブ)を代わりに解決してくれる製品・サービスを雇っている」のである。その解決されるべき“ジョブ”を見つけることが、イノベーションへの第一歩なのだ。