環境変化×市場の複雑化×情報過多が調査を困難にする
なぜ情報収集が難しいのだろうか。その背景には、環境変化、市場の複雑化、情報過多の3つがある。
これまで情報手段では、
- 新聞・業界紙検索
- 文献/業績レポート
- 展示会・交流会
- 対面インタビュー
- Webニュース検索
- SNS(VoC)検索
- アンケート調査
- 現場調査
などがあった。
しかし、コロナ禍によって展示会・交流会、対面インタビュー、現場調査が難しくなってきている。また、かつてはシンプルに業界紙を読んで業界の情報を見ていれば良かったのに対して、現在は業界の定義も曖昧になり、様々な業界からディスラプターとしてプレーヤーが参入してくる時代である。今までよりも広い範囲に目配りをすることが必要だ。さらにWebニュースは毎年数億記事と、人間が処理できる量の限界を超えた膨大な数になっている。加えて単純な検索だとSEO対策をしている広告記事ばかり目につくような状況もある。
つまり、環境変化×市場の複雑化×情報過多で調査が困難になっているのだ。
より良い情報を効率的に得るために現在注目を集めているのが、自然言語処理のAI技術である。これまで10年近く、AIの技術は、数字のデータ予測と、工場での不良品検知や属性判断などに使われる画像認識の技術がメインだった。これらは情報収集には使いやすい技術ではないが、この2~3年で大きなブレークスルーが起き、自然言語処理のためのAIの技術革新が進んでいるのだという。自然言語とは人間が生活のなかで普通に使っている、日本語や外国語などのような言語を指す。自然言語処理AIの技術進歩はめざましく、2019年大学入試センター試験の英語筆記科目に挑戦した結果、人間の高校生の平均123点を大幅に上回る185点を取れるような、人間を超える言語理解能力を持ったAIが誕生しているのだ。
これは企業の情報収集に大きな可能性を提供する。なぜなら、ビジネス上で使われるほとんどのデータ、たとえばニュースサイトの記事、特許、論文などの研究データ、社内の提案資料や議事録、競合他社のプレスリリースなどは、すべてテキストデータであり、自然言語処理の技術をビジネスに使えば、人間の言語理解を超えたAIが秘書のように情報を出し、インサイトをもたらすことができるからである。