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ベルリンでは「都市の幸福度」の可視化が、もう始まっている

特別鼎談:チクセントミハイ博士×入山章栄氏×佐宗邦威氏中編

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フィレンツェが体現する「クリエイティブ都市」の在り方

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 クリエイティビティが生まれる街づくりが、行政やメディチ家などの「ゲートキーパー」主導によって進行したという前編のお話はとても興味深いものでした。つまり「クリエイティブ都市はコントロールできる、人工的に創り上げることができる」と理解していいのですね。

チクセントミハイ:
 ええ、そうです。まさに約600年前のクリエイティブ都市であるフィレンツェで、当時のゲートキーパーであったメディチ家が行った宣言がそれを象徴しています。その宣言とは「誰もがその価値を理解し、破壊してはならないと思うような『美しい都市』を創る」というものでした。そして、それはフィレンツェが長きに渡って繁栄し、そして生き残るためにも貢献したのです。事実、第二次世界大戦でドイツ軍がイタリアを経由して撤退しようとしていた時には多くの都市が破壊されたのですが、フィレンツェの記念建築物の大部分は破壊をまぬがれています。

入山:
 フィレンツェの人々の卓越したクリエイティビティが、ドイツ軍人の心を動かしたというわけですか。そして、それが600年前のメディチ家の戦略的なビジョンに影響を受けていることに驚きます。

チクセントミハイ:
 そうです、メディチ家は戦略的に意思決定を行ったのです。彼らは「ただ見た目に美しい街を作りたいのではない。美しい街は破壊から我々を守ってくれるはず」と考えていました。加えて大事なことは、彼らが「芸術は人類のテクノロジーの最高の形態である」と認識していたことです。実際に1400年代のフィレンツェでは、建築と絵画において、当時、最高のテクノロジーが使われました。現在、芸術は必ずしも文化の最先端とみなされていません。むしろクリエイティビティは、技術や科学にこそ発揮されると考えられています。

佐宗(米デザインスクールの留学記ブログ「D school留学記~デザインとビジネスの交差点」著者):
 「芸術がテクノロジーの一部」だという視点は非常に興味深いです。一般には、芸術とテクノロジーはむしろ正反対のものと思われがちです。しかし最近は、技術とアートを融合させる動きや、アートと科学を融合させる動きも起こってきています。例えば、日本でいま話題の企業「チームラボ」は、まさに技術とアートを融合させています。

チクセントミハイ:
 芸術はテクノロジーの一種であり、優れたテクノロジーは芸術なのです。芸術は人の心を揺り動かし、「ワーオ!」と思わせるものです。かつての芸術は技術や科学と切り離されていませんでした。しかし、現代ではなかなか難しいでしょうね。

クリエイティビティのシステムモデル図1:クリエイティブ都市における芸術とテクノロジーの関係
©Junko Shimizu


ミハイ・チクセントミハイ 教授

1934年ハンガリーで生まれる。1956年にアメリカに渡り、1970年よりシカゴ大学心理学科教授、教育学教授を経て1990年よりクレアモント大学院大学教授、クオリティ・オブ・ライフ・リサーチセンター長を務める。「フロー理論」の提唱者として知られており、創造性や幸福に関する研究を行っている。


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