SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

Biz/Zineブックレビュー

『LEAN ANALYTICS』進化したスタートアップ手法

ビジネスユーザーのためのブックガイド

  • Facebook
  • X
  • Pocket

Airbnbが立てた「写真が成功の鍵」という仮説

著者の言い方によれば、起業家はもっとも多く「思い込み」を持つ人間だそうです。強いビジョンはともすればバイアスを生みます。こうしたバイアス=思い込みを、修正してくためには、「MVPを作って顧客にヒアリングすること」と、もうひとつは、「データに向き合うこと」です。著者の言い方によれば、「現実歪曲空間に穴をあける」ことです。

ひとえに「データに向き合う」といっても、一筋縄ではいきません。著者はここで、データ分析をおこなう際に重要なポイントをいくつか紹介しています。 よく「データから知見を導出する」といいますが、結果を出すにはやはり、仮説が重要です。では、仮説とはどのようなものでしょうか?

この本では、冒頭の事例で、仮説とテストに非常にわかりやすい例を示しています。 それは、今注目を浴びている旅行者の宿泊と交流のサービスサイト「Airbnb」の事例です。Airbnbが考えたのは、宿泊の予約を増進するための要因は、「写真」だという仮説です。

これは、「プロの写真を使ったホストのほうがビジネスがうまくいく」という仮説から始まった。この仮説が正しければ、ホストはプロの写真サービスを求めるだろう。これは創業者の直感だ。プロの写真がビジネスに役立つと気づいたのだ。ただし、それをそのまま実現するのではなく、コンシェルジュ型MVPを作って、すばらく仮説をテストしたのである。(P.4)

「サイトの力はプロの写真の力と連動している」--この気づきを得てから、即座に実行し計測をおこなっていったところ、顧客数を拡大したといいます。つまり、仮説は直感とセンスが重要で、そのアイデアをテストするために最小限の製品・サービスを立ち上げることが重要だということです。

ページビュー神話を脱し、本物の指標を見よう

Webビジネスなどのスタートアップ企業が、指標として気にするのは、ヒット数、ページビュー、訪問数、ユニーク訪問者数、(ソーシャルの)フォロワー/友達/いいねの数、サイト滞在時間/閲覧ページ数、収集したメールアドレスの数、ダウンロード数、などです。わたしたちは、ついこれらの数字を見て一喜一憂しがちですね。
著者たちによれば、これらは「虚栄の指標」だと言います。

それでは、どのような指標が実際のスタートアップにとって役に立つのでしょうか?著者が力点をおいているのは、「チャーン」(一定期間に離脱した顧客数)のような計測値、そして「コホート分析」です。

コホート分析は、売上や顧客数を、累積値で見るのではなく、たとえば会員化した期間などのグループに分けて個別に見る方法です。概念的に理解するのは難しいのですが、最近ではGoogle Analyticsにベータ版が入っているので誰でも使うことができます。

もうひとつ、この本の2章で著者が指摘しているスタートアップが陥りやすいポイントは、相関指標と因果指標。ビジネスの成功のための指標として、相関関係に着目し、相関分析から単回帰分析、重回帰分析などをおこなう方法論は一般的です。しかし、相関関係のみに注目すると、間違った意思決定をしてしまうことがある、と著者は指摘しています。大事なのは相関よりも、2つの指標を関係付けている原因をみることであるといいます。

2つの指標の相関関係を見つけることは悪いことではない。相関関係がわかれば、これから何が起きるかを予測できるだろう。だが、相関関係ではなく原因を見つければ、未来を変えることができる。(P.17)

次のページ
ビジネスモデルごとに着眼すべき重要指標が異なる

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
Biz/Zineブックレビュー連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

京部康男 (Biz/Zine編集部)(キョウベ ヤスオ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X
  • Pocket

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング