上場後に成長が止まる日本のスタートアップ
バブル崩壊以前の1989年当時の世界の時価総額ランキングTOP20には、銀行や製造業をはじめとした14社もの日本企業がランクインしていた。ところが、2021年の最新のランキングでは、GAFAをはじめとした新産業が台頭し、日本企業は姿を消した。
なぜ日本からはGAFAのような世界で戦える企業が生まれないのか。共同研究はこうした問題意識を背景に、日本からイノベーションを起こし、新産業を生み出すためのボトルネックを明らかにすべく行われた。
レポートによれば、日本国内のスタートアップがこの10年で伸びていることは間違いない。資金調達額は2011年からの10年で5.6倍に。マザーズ、ジャスダックの新興市場に上場した企業数も、2011年の27社に対して、2020年は77社と2.9倍まで増えている。
問題は「上場した後の成長」だ。新興3市場の上場後の業績推移を見ると、全体の4分の1以上の企業は、上場後3年間のCAGR(年平均成長率)で売上成長が見られない。営業利益は上場期からの3年間で、中央値-0.6%、平均値2.3%の成長にとどまっている。
新興市場上場後の時価総額推移で見ても、約半数の企業(中央値)がほぼ成長していない。平均値では一部の高成長企業のおかげでプラスになっているものの、1期後23.7%、3期後66.3%にとどまっており、高成長とまでは言えない。「景気の動向などもあるから一概には言えないが、中央値がこれくらいなのは止むを得ないとしても、上位の成長の伸びは気になるところだ」と鈴木氏は言う。
2013~19年に新興市場に上場した企業447社のうち、2021年3月30日時点で5000億円の時価総額に達した会社はメルカリとぺプチドリームの2社。1兆円以上の企業は1社もない。東証一部への直接上場を含めても、リクルートホールディングスなどひと握り。以上のことから、日本のスタートアップは上場後に大きな成長を実現できていないことが分かる。