“夢物語”だった小売DXシナリオが既に現実に
「何度か買ったことがある洋服のブランドのアプリを入れ、気軽にアンケートで好みの色やコンプレックスを登録しておいたら、週末、買い物途中でアプリにアラートが出た。開いてみると、クーポンが届いていた。偶然にも、店舗は近くにあるらしい。タイミングが良かったので店舗に行ってみると、店員が自分の好みや悩みにばっちり合わせたコーディネートを提案してくれた。その時には買わなかったが、やはり店舗での体験が忘れられず、ECサイトで商品を見ていたところビデオチャットの提案がポップアップで表示された。時間もあったので受け入れると、店員さんが商品を見せながら話してくれて、安心して購入できた……」
講演で紹介された、KARTEによって可能になるアパレル業界でのDXシナリオの例である。アプリで顧客の情報を得て、顧客が実店舗の500m以内に入ったことを検知して来店を促進するポップアップを出し、実店舗ではアプリで得た情報に合わせてパーソナルな接客をする。ECサイトで購入した場合でも、接客した従業員の履歴は残っていて、提供したサービスの価値が可視化される。ビデオチャットを使って店員と話せることは顧客にとっての安心感にもつながる。ブランドと顧客の関係を近づけられる例である。
コスメ業界のシナリオ例としては次のようなものが挙げられる。店頭での接客情報を反映することで、顧客の好みに合った商品をオンラインでポップアップさせて紹介する。顧客はそれを見て気になった商品があれば、会社の昼休みなどにテキストチャットで気軽に相談できる。対応は、これまでの履歴を見ながらビューティアドバイザーが行う。顧客は迷いが出ればビデオチャットでビューティアドバイザーに詳細を聞き、その場で購入できる。専門知識が豊富なアドバイザーにいつでも相談できるという顧客体験を提供できる。
ショッピングモールでもDXによって今までとは異なる体験を提供できる。家族連れ、恋人同士、一人でと、さまざまな来訪スタイルを顧客がオンラインで登録すると、それをもとに、訪問当日に楽しめる情報がデジタルサイネージに表示される。それを見て、顧客がイベントなどを体験すると、その後、アンケートが送られる。顧客のイベントの感想を集めることで、次の企画や改善ポイントを調査し、顧客の要望を生かしてイベントを開催していく。それによって、顧客が「自分好みの商業施設だ」と思えるような状況を作っていく。
ホームセンターなどの商品点数が非常に多い業界では、Webサイト上で商品が探しきれず、店舗にやってくる顧客が多い。その際に、店舗外と店舗内ではサイトの表示が変わるような設計にしておき、スマホからサイトを使って、目的の商品がどの辺りにあるか位置情報を示せれば、購買サポートとして有用だろう。また、DIYの商品などは使い方がわからずに、購入しないで一度家に帰ってしまうこともあるはずだ。そういった時にプロフェッショナルがビデオチャットで対応できれば、最適な商品の購入をサポートできる。
「これらのシナリオは、“夢物語”ではありません。すでに三菱地所さんとNRIデジタルさんが弊社の顧客体験プラットフォームKARTEを使って、膨大な顧客接点をデジタル化し、都市OSをアップデートしている例もあります。また、スポーツウェア、スポーツ用品の製造販売を行うゴールドウインさんは、全国13店舗でKARTEによって店舗とECをシームレスにつなぎ、解析したデータを顧客の良質な体験として還元するなど、すでに現実になっているのです」
と、神尾 悟史氏は説明する。