時代は中央集権型資本社会から「共感資本社会」へ
田淵良敬氏(以下、敬称略):「ゼブラ企業」は、米国のZebras Uniteが2017年にマニフェストを発表し、そこから徐々に広まりつつある概念です。ユニコーン企業への短期的な成長期待や資本の偏りを受け、そのアンチテーゼとして誕生しました。
短期での指数関数的な成長や、市場での競争優位を目指すユニコーン企業に対し、持続的な成長と社会課題解決、公共・コミュニティへの貢献を重視するのがゼブラ企業の主な特徴です。
佐久間優奈氏(以下、敬称略):今回は、ゼブラ企業の実践と密接に関係する、ESG投資やインパクト投資の領域に様々な立場から関わっている皆さんが集まっています。「利益と社会課題解決の両立」というテーマにおいて、各々がこれまでの取り組みや経験の中で感じたことや、考えていることがあるのではないでしょうか。
たとえば、私が所属しているMPower Partnersは、ESG重視型のベンチャーキャピタルファンド(VC)です。ESGを成長戦略として取り込み、社会課題解決に取り組む起業家を支援しています。
私は、ESGを「持続可能な企業成長に必須の要素」だと考えています。たとえば、優秀な人材を採用するためにパーパス(存在意義)を明確に定めたり、従業員のエンゲージメント向上に努めたりすることも、ESG経営の一環といえるでしょう。こういった施策は、企業が将来も持続的に成長し続けるために、スタートアップの段階から取り組むべきではないでしょうか。
新井和宏氏(以下、敬称略):私は2018年に、非営利型株式会社であるeumo(ユーモ)を設立しました。それ以前には鎌倉投信という会社を創業し、「収益性と社会貢献性の両立」を支援すべく、様々な企業に長期で投資を行っていました。
eumoは、合理化・効率化が意思決定の基礎となっている現在の中央集権型資本主義ではなく、自律した個人がそれぞれの共感を基礎として、多様なコミュニティに所属する「共感資本社会の実現」を目指し、活動している組織です。2021年12月には、日本クラウドキャピタル(現 FUNDINNO)が運営する“株主コミュニティ”に参加しました。
FUNDINNOは、非上場株式の取引を日本で初めて、インターネット上で行えるようにした株式投資プラットフォームを提供している企業です。投資家がスタートアップを所有するこれまでのIPOやM&Aとは違い、コミュニティでスタートアップを育てる出口戦略へと移行する「Exit to Community(イグジット トゥ コミュニティ)」の動きが世界中で注目され始めており、同社もそれを独自に実現しました。
eumoは「利益を社会に還元する」ことを掲げており、これに共感してくださる株主の皆さんを「共感株主」と呼んでいます。そして共感株主には、我々が発行する共感コミュニティ通貨「eumo」を毎月付与しています。こうして我々独自の経済圏、そして新たな社会のコミュニティづくりを目指しているのです。