三井不動産がMaaSの実証実験で目指すもの
石野真吾氏(以下、敬称略):三井不動産さんは、「MaaS」や「CASE」という言葉が一般的に知られる以前から、不動産業界の中でも先んじて移動関連の事業開発を進められている印象があります。まずはMaaSという領域に不動産会社として参入した背景を伺ってもよろしいでしょうか。
門川正徳氏(以下、敬称略):社会環境が急速に変化したり人々のニーズが多様化したりしている今、“街づくり”に取り組む三井不動産としては、それにあわせて提供するサービスを変え、既存の事業にとらわれることなく取り組む必要があると考えています。
「移動」という行為は、お客様が目的の街や建物で何かしらの体験をする際に必ず発生します。生活拠点やワークスペースが多様化する中、“場”の提供とあわせて“移動サービス”の提供をしてこそ、“場”の価値をさらに引き上げることができると考えました。そこで取り組むようになったのがMaaSです。
石野:ありがとうございます。具体的にはどのようなことをやられているのでしょうか。
門川:私は三井不動産のビジネスイノベーション推進部と、MaaSなどの新規事業開発を行うShareTomorrowという子会社に籍を置いており、そこで「&MOVE」という名称の不動産MaaSサービスを開発しています。これまでに、門前仲町エリアとららぽーと豊洲を結ぶシェアード・シャトルサービス(オンデマンド型相乗りサービス)や、三井ガーデンホテルに宿泊のお客様向けに周辺の観光情報レコメンドと移動サービスを提供するなど、複数の実証実験を行ってきています。また、“移動”に着目したサービスとしては、ShareTomorrowでは「&MOVE」の他に移動車を活用したシェアリング商業プラットフォーム事業「MIKKE!」、移動式ユニットを活用した宿泊施設の「HUBHUB」を展開しています。
石野:「&MOVE」実証実験を行っているエリアには電車やバスなど従来の交通手段もありますが、それらとの違いはあるのでしょうか。
門川:基本的に都心部は既存の交通手段で十分便利だという前提があるものの、それでも目的地が鉄道駅から距離がある場合や、目的地まで大した距離でもないのに電車を複数回乗り換えなければならない場所というのはいくらでもあります。現状は「そういうものだ」と受け入れてしまっている負に対して弊社が新たな選択肢を提供することがポイントだと考えています。
石野:なるほど。ららぽーと豊洲の買い物金額を交通費として還元するという仕組みもありました。自社のアセット内での回遊性を高めようという目的があるのでしょうか。
門川:そうですね。“街づくり”のために「&MOVE」を提供していくのと同時に、当社施設をより一層便利にご利用いただくために「&MOVE」を提供するという二兎を追っていけたらと考えています。