企業ごとの事業環境や顧客に合わせ、既存事業のイノベーションや真に価値のある新規事業・プロダクトを生み出す
──アイスリーデザインは現在、大企業を中心に既存事業のイノベーションと新規事業創出の支援を行っていますが、それ以前にはSaaSを手掛けるプロダクトベンダーとして活動していたり、ソフトウェアの受託開発業を行っていたりした時期もあるとお聞きしました。事業内容を変えてきた背景には、どういった理由があるのでしょうか。
芝 陽一郎氏(以下、敬称略):昨今、デジタルを活用することが当たり前となり、ソフトウェアというものはあらゆる業種、業界で必要とされています。多くの企業は、ソフトウェア制作の大部分をSIerやデザイン会社に依頼し、UIを設計してもらっていますよね。アイスリーデザインがソフトウェアの受託開発を主な事業としていた2014年頃には、こうした開発の形は当たり前でした。
しかし、本来ソフトウェアというものはユーザーにフォーカスし、顧客や事業に最適な形を考えながらUIを設計して、リリース後も改善を繰り返すものです。これは、外部に丸投げする開発の形では実現することが困難でしょう。自社の顧客や事業にフィットするものでなければ、世の中に何も価値を生まないものを作ることになってしまいます。
こうした課題を受けて、プロダクトベンダーとしての経験も持つ我々が、SIerやベンダーだけではできないような、企業ごとの事業環境に合わせた“ソフトウェアドリブンなDX支援”を行っていこうと考えました。これが、「イノベーション全体を支援する」という現在の事業のスタートにつながったのです。
──元々、アイスリーデザインの創業は2006年、コンサルティング事業でのスタートでしたよね。自社でSaaSプロダクトを開発した経験や、ソフトウェアの受託開発を行ってきた経験と、コンサルティング事業が組み合わさった結果、今の業態になったということですね。
芝:そうですね。実は、顧客の新規事業創出に関連するご相談や依頼は、ソフトウェアの受託開発を行っていた時期からいただいていました。しかし、ほとんどの場合、プロジェクトの初期の予算があらかじめ設定されていて、依頼前からソフトウェアの機能要件が決まっていたために、我々は“使われるかも分からない機能”を開発するだけになってしまっていました。それでは顧客と我々の双方にとって、非常にもったいないですよね。
また、開発を依頼してくださっていた企業の多くも「この姿勢ではいけない、自社の認識や考え方を変える必要がある」ということは自覚していました。そこでコンサルティング事業のノウハウを活かし、人材開発から実際のプロダクト開発まで、変革を上流から一気通貫で支援するサービスを提供しようと決めたのです。
支援の最前線で感じる、大企業がイノベーションで抱える深刻な悩み
──アイスリーデザインの顧客は、7~8割が大企業だそうですね。現在支援されている各社に共通する、事業開発やプロダクト開発上の課題、ニーズにはどういった傾向がありますか?
山本 真吾氏(以下、敬称略):比較的共通しているのは、「レガシーなシステムを入れ替えたい」「部分最適重視で進んできたが故の、ツギハギだらけの部門システムを最適化したい、再編したい」というニーズですね。それから、AIなど最新のテクノロジーを導入して、属人的な業務を最適化したいという問い合わせもいただきます。
そして、何より多くの企業が危機意識を持っていると感じるのは、「人材」に関してです。社内の意識や思考を時代に合わせて変えていかなければならないと自覚していながらも、実際に変革を行うのは難しいのです。
──なぜ意識や思考の変革が難しいのでしょうか。共通した理由はありますか?
山本:DXを行う際、多くの企業がコンサルティングファームに依頼をしたり、システム開発の要件定義をしてSIerに依頼し、設計・製造開発してプロダクトをローンチしたりします。ただ、そういった支援は「売り切りタイプ」なんですよね。支援するコンサル会社やSIerがすべて代わりにやってしまうので、依頼をする企業は変革の当事者となりません。
その結果、デジタルを活用した新規事業の進め方を理解している人材が育たず、せっかく外部に作ってもらった新規事業が長く続かない。だから、人材や組織を強化する必要性を、多くの企業が感じているのでしょう。それに応えるべく、アイスリーデザインは一気通貫で人材開発から組織変革まで、伴走型のDX支援を提供しているのです。