学習からイノベーション成功までを即実践、独自の「ヒューマンイノベーションプログラム」とは?
──アイスリー式の変革支援プログラムは、人材育成(Human)から始まるんですよね。イノベーション人材の課題は多くの企業が抱えており、社員のリスキリング(学び直し)を目的とした研修などを行う企業もありますが、なかなか成果を得られていない印象があります。なぜでしょうか?
山本:大企業に多いパターンの一つとして、次世代リーダークラスの人材を主な対象とした外部研修がありますよね。もちろん研修の期間は皆さん意識も改まり、モチベーションも高まるかと思います。しかし研修後、日常に戻ってからは通常業務が忙しすぎて、なかなか学んだことを実践してみたり、社内へ広めたりといった余裕がないといいます。結局そのまま、イノベーションの風土が社内へ浸透することなく、一ヵ月後には皆さん忘れてしまうというケースが非常に多いのです。
イノベーションに限った話ではないですが、新しいカルチャーを浸透させる、仕組みを変えるといった場合には、一過性の施策だけでは厳しいでしょう。やり続ける、実践の連続に身も組織も置かなければなりません。
──では、アイスリーデザインはHumanの段階で、具体的にどういった支援を行うのでしょうか。
山本:「ヒューマンイノベーションプログラム」という独自の支援を用意しています。企業の次世代リーダー約30名に、我々が用意したワークショップへ参加してもらうのです。そして5~6チーム(1チーム4~5人)に分かれてもらい、全4日間(各6時間)、計24時間、共に過ごしていただきます。
Humanの段階における本プログラムの目的は、意識や思考の変革を行い、学んだことを即座に、Techの段階で行うプロジェクト推進の場で活かしてもらうことにあります。これにより、参加者は新たな意識や思考を忘れることなく、半ば強制的に実践しなければならない状況に身を置くことができるのです。
また、その際は簡単なプロジェクトから少しずつ取り組んでもらうのですが、小さな成功体験をいくつも作ることで、組織の中にイノベーションのノウハウや意識が蓄積されていきます。
──24時間のワークショップで終わりではなく、その後の実践、成功までを一気に経験してもらうことで、一過性のプログラムで終わらせないということですね。
山本:そういうことです。つまり、Humanの支援を分離して一つのものと考えるというよりは、その後のTech、Opsと合わせてより着実にイノベーションを成功させるためのスタート地点が、Humanの支援だと考えていただくのがよいでしょう。
──ワークショップの参加者には、どのように意識や思考を習得してもらうのでしょうか。
山本:クレイトン・クリステンセン教授の「破壊的イノベーション」「持続的イノベーション」「ジョブ理論」のフレームワークをベースとして、ワークショップを進めていきます。ワークの内容は、企業が抱える課題や現状に合わせてカスタマイズを行いますが、一例としては次図のような内容です。
ワークショップの間、我々はフレームワークに則ってファシリテーションを行いますが、基本的に主役は参加者なので、大きく介入することはありません。企業の課題を考え、発見し、解決するのは、そこに所属する社員の皆さんだからです。24時間を通して、その力をつけていただきます。
──単純なインプットではなく、自社の事業を当事者として考えることで、より実践的な体験をしていくのですね。
芝:やはり、実際に体験してみないと100%の理解は難しいですし、その企業の次世代リーダーを担う皆さんが新しい思考法を使って、自分たちの企業や組織の課題を発見することが、支援の提供価値だと思っています。
また、見出した課題をしっかりとプロジェクト化し、アジャイルの手法と最新テクノロジーを使って実際に解決するという、小さな成功体験をしてもらうことが非常に重要です。
──イノベーションへのプロセスを進めていく中で、最終的には新規事業の創出を目指す企業も多いとお聞きしました。しかし、イノベーションの意味を理解できていない故に、自社の本業の領域から大きく離れた事業を、いきなり生み出そうとしてしまうという話がありますよね。
芝:新規事業とは、何か突飛なアイデアを出せばよいというものではありません。本業との親和性は非常に重要です。
いきなりガツンと、既存事業を支える新しい事業の柱を作ろうと考える人もいますが、そのためには組織の土台が必要なのです。土台がない場合は、まずは地に足がついた形、つまり既存事業の周辺領域や、本業の改善で成功体験を積む必要があります。
それでいくつか成功事例が生まれたら、大きく飛べばいいと思います。ホップ・ステップ・ジャンプの順番が必要なのに、いきなりジャンプしようとするから失敗するのでしょう。