世界で通用する「B Corp」認証、企業と事業の全体を評価する厳格な基準とは
「B Corp」とは、NPO団体であるB Labが、社会的・環境的パフォーマンスと説明責任、透明性に関する厳格な基準を満たしていると認定した企業に与える認証。経済性と社会性を両立する企業が取得できる別の認証として「ベネフィット・コーポレーション」というものがあるが、こちらは米国の一部地域でしか効力を発揮しない。対してB Corpは、世界中で通用する。
その特徴的な点は、建物や製品など事業の一側面を対象としたものではなく、従業員に対する取り組みやコミュニティへの参加、環境フットプリント、ガバナンス構造、カスタマーとの関係性など、企業とその取り組み全体を対象としている点だという。
企業全体を評価することで、真にサステナブルな経営を行っている企業と、SDGsへの取り組みが不十分にもかかわらず、巧妙なマーケティングで評価を上げようとしている企業を区別できる。近年、グリーンウォッシュや“SDGs的”な企業・製品が世の中に増えつつあることから、この認証は今後より大きな意味を持つようになるかもしれない。
現在、B Corp認証を取得している企業は、世界で5,000以上にのぼる。本書は、今後も取得企業が増え続けるだろうとした上で、「世界で一番になることではなく、世界にとって一番よいことを成し遂げることがビジネスの成功であるとし、いつの日か、あらゆる企業がその成功の定義にもとづいて競い合うようになる」と述べている。
認証のステップと根源にある「B エコノミー」の概念
B Corp 認証を取得するためには、以下3つの要件において審査を突破する必要があるという。
- 社会的・環境的パフォーマンス:従業員、コミュニティ、カスタマー、ガバナンス、環境から成る5つの評価指標に対して企業全体が及ぼしているインパクトを査定する「B インパクトアセスメント」で80点以上のスコアを獲得できるか
- 法的説明責任:あらゆるステークホルダーに対するインパクトを考慮して会社の意思決定を行っているか
- 公に対する透明性:B インパクトアセスメントでの自社スコアをカテゴリー別にまとめたB インパクトレポートを、「bcorporation.net」で公開できるか
そして最後に、B Corpコミュニティを定義する価値観を示した文書「B Corp Declaration of Interdependence(B Corp相互依存宣言)」と、認証 B Corpに求められる条件・役割を定義した条件規定書「B Corp Agreement」に署名し、企業の年間売上高に応じた年間認証料を支払うことで、ようやくB Corpとして認められる。認証期間は3年で、その後も認証を維持するためには、再びこの認証ステップを踏まなければならない。
B Corpは「どうやって相手より優位に立てるか」ではなく、「どのようにコミュニティ全体のインパクトを組み合わせ増幅できるか」という考え方にもとづいて判断・行動する。その根源にあるのが「B エコノミー」という概念だ。
B エコノミーのコミュニティは、B Corpに加え、ベネフィット・コーポレーションやB インパクトアセスメントを利用した自社のパフォーマンスの査定と改善に取り組む企業、それらを支援する投資家や学者、従業員や顧客など、あらゆる人が参加できるとしている。いつかB エコノミーの理念が地球上の経済における標準となることが、彼ら彼女らの目標なのだという。