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タッシュマン教授が語る「両利きの経営」──深化と探索における経営者の役割、組織構造やパーパスの意味

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両利きの経営を実践するためのフレームワーク

 本稿では、タッシュマン教授の講演内容だけではなくチャールズ・A・オライリー教授(以下、オライリー教授)との共著書である『両利きの経営』、エグゼクティブ・コーチの加藤雅則氏とオライリー教授らの共著書『両利きの組織をつくる』などを引用しながら、企業がなぜ長期的に成功をしつづけるのが難しいのか、イノベーションを起こす企業と変化に対応できず大きく業績を落とす企業の差は何かに迫っていきたい。

 まず「両利きの経営」に関して、本講演を理解するうえで必要な知識を簡単におさらいしておこう。

 「両利きの経営」とは、既存事業の「深掘り(exploit)」と新しい事業の「探索(explore)」を両立させる経営のこと[1]だとされている。

 また、マッキンゼーのコンサルタントであるリチャード・フォスターが提唱した企業の成長と投資の関係性を表した「成長のS字カーブ」というモデルがある。これを企業に置き換えると、企業は「勃興期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という事業ライフサイクルを辿る。衰退期に入る前に、企業は新規事業を生み出さなければならない。『両利きの経営』では、コア事業と成長事業、探索事業などの異なる成長段階の事業が併存する状態にあるとしている。

事業のS字成長カーブb
図版出典:加藤雅則、チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデ『両利きの組織をつくる 大企業病を打破するための「攻めと守りの経営」』(2020年、英治出版)を参照し、加藤氏の許諾を得て、作図/クリックすると拡大します

 一見当たり前のように思える「両利きの経営」も、実践が難しいことは多くの読者の肌感覚と乖離がないとことであろう。その理由も『両利きの経営』と『両利きの組織をつくる』では組織経営論の研究知見を用いて整理している。それが「サクセストラップ(成功の罠)」だ。成功した事業を深化することへの慣性が大きくなり、新しい事業を探索するための新しい業務の進め方などを身につけることに疎くなるというものだ。

 『両利きの経営』では、これらの慣性を打破し既存企業が新規事業を探索するために必要なフレームワークを提示している。その中でもまず理解したいものが「イノベーション・ストリーム」だ。

イノベーション・ストリーム
図版:イノベーション・ストリーム※出典:加藤雅則、チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデ『両利きの組織をつくる 大企業病を打破するための「攻めと守りの経営」』(2020年、英治出版)を参照し、加藤氏の許諾を得て、作図/クリックすると拡大します

 イノベーション・ストリームを簡単に説明すると、縦軸に市場・顧客(既存/新規)、横軸に組織能力(既存/新規)の4象限を置き、領域1(コア事業:深化対象)、領域2~領域4の探索領域での事業を整理したものだ。


[1]加藤雅則、チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデ『両利きの組織をつくる 大企業病を打破する「攻めと守りの経営」』(2020年、英治出版)

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栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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