両利きの経営における包括的パーパス
デービス氏はNASAの150人の研究者にアンケートを行った。すると、140人がオープンイノベーションで採用したアイデアを否定したものの、10人だけがこのアイデアに賛同した。デービス氏はその10人に話をさらに話を聞いたところ、以下のようなコメントが返ってきた。
「私たちは研究をするためだけにNASAにいるのではありません。宇宙にいる飛行士の安全を守るためにいるんです」(オープンイノベーションのアイデアに賛同したNASAの研究者)
タッシュマン教授らは、これを「包括的なパーパス」と名付けた。「両利きの経営」の課題の1つになるのが、このNASAの事例が示すとおり、複数のアイデンティティを社内で同時に扱うことだとした。局所的な視点ではなく、包括的な“北極星”となるようなパーパスの存在が、探索事業と深化事業の矛盾や対立を乗り越えるうえで欠かせないものになる。