「人生100年時代」に拡大し続けるヘルスケア産業
「人生100年時代」とも言われる今、人の根源的な欲求である“健康”を扱うヘルスケア産業に注目が集まっています。その市場規模は大きく、また高齢化を背景に拡大しており、2016年には約25兆円、2020年には約28兆円、2025年には約33兆円になるという推計もあります[1]。成長が見込まれる市場ということで、IT企業や他産業の企業がヘルスケア市場に次々と参入しています。
一言で「ヘルスケア」といっても、
- 医療機器
- 医薬品
- 在宅医療サービス
- ヘルスケアIT
- サプリメント
- フィジカルサービス
など、多岐にわたる領域を内包しています。そして、各領域で新たなサービスや製品が次々と生まれており、それが市場拡大を後押ししているのです。
たとえば医薬品領域では、AIを活用した創薬や、新型コロナウイルスのワクチンで話題となった「mRNAワクチン」など、新たなテクノロジーによるイノベーションが次々と生まれています。また、ヘルスケアIT領域では、カルテの電子化とそれにともなうビッグデータの活用、オンライン診療やオンライン服薬指導、VR機器の活用など、読者のみなさんが実際に患者として目にするほどに普及しているものも多数あります。フィジカルサービス領域には、介護やリハビリだけでなく、“予防”の観点でのジム、パーソナルトレーニング、動画コンテンツも伸びていることが特徴です。
ヘルスケア産業における3つのトレンド
続いて、ヘルスケア産業における大きなトレンドを3つご紹介します。
1つ目は「規制緩和」です。ここでは特に日本における規制緩和をご紹介します。オンライン診療・オンライン服薬指導について、以前から厚生労働省では議論が進められてきましたが、コロナ禍を機に規制緩和が加速。2020年4月には「時限的・特例的な対応」として初診のオンライン診療を解禁、2022年1月には恒久的にオンラインでの初診が認められました。また、2022年4月には「オンライン服薬指導」の規制が緩和され、診療から薬の受け取りまでをオンラインで完結させることも可能となりました。
2つ目は「M&Aや業務提携の増加」です。たとえば創薬にかかる期間や費用が増え続けており、ものによっては15年・1000億円以上要することもあります。そのため、特定の薬品に強みを持つ企業や、研究開発が進んでいる企業を買収する例が増えており、2023年2月には武田薬品工業が米ニンバス・ラクシュミを40億ドル(約5500億円)で買収。7月にはバイオ医薬品大手のバイオジェンが希少疾患薬を手掛けるリアタ・ファーマシューティカルズを約73億ドル(約1兆円)で買収するなど、国内外で大型のM&Aが続出しています。
3つ目が「テクノロジーの活用」です。1つ目の規制緩和でも紹介しましたが、コロナ禍を追い風にオンライン化が加速しています。それに加え、ウェアラブルデバイスやIoTを活用したヘルスケア製品が出て着たり、認知症や精神疾患の治療にVR機器が活用されたり、患者情報の管理や薬品のトレーサビリティの確保にブロックチェーンが活用されたり、AIを活用した医療支援システムが出てきたりと、様々な領域で新たなテクノロジーの活用が進んでいます。
[1] 経済産業省「次世代ヘルスケア産業協議会のこれまでの成果等について」