環境の変化は生成AIだけじゃない。強いチームが持つ意識とは
続いて村瀬氏が解説するのは、「④心理的安全性」。これをチーム内に醸成できるかどうかが、ひとつの分かれ目になるという。
「心理的安全性には、情報共有を促し、チームが学習する機会を獲得しやすくなる効果があります。『このチームではどんなことを話しても大丈夫だ』という感覚を共有していることが重要です」(村瀬氏)
心理的安全性の概念を発見・提唱したハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授は、ある病院での従業員の失敗のデータを集めた。「心理的安全性の高い病院のほうがミスは少ないだろう」と仮定してデータを収集し検証したところ、ある実態が明らかになったという。それは、心理的安全性の高い病院のほうがミスの“報告件数”が多かったということだ。
ミスの内容が共有されていれば、「これは病院のシステムに問題があるから改善すべき」など、すぐに院内のアップデートが可能だ。こうした機会を得るためにも、リーダーがメンバーとともに心理的安全性を作っていくことが重要だと、村瀬氏は力説する。
そして最後に実施したいのが「⑤振り返り」だ。知恵は経験と振り返りから生まれる。しかし、組織や個人が常に忙しい状態にあると、振り返りをせずに終わり、知識にもつながらないという研究報告が多いのだという。
村瀬氏は、振り返りの手法の一つとして「継続的学習法(アフターアクションレビュー)」を紹介した。その行動のゴールは何だったのか、今まで何をやり、どういう結果になったのか、どうすればよかったのか、などをアクションの度に定期的に振り返る手法だ。これを繰り返すことで、チームの強みと弱みを浮き彫りにすることができる。
「コロナ禍で『どうすればリモートワークを自社の成長に活かせるか』という振り返りをきちんとやってきたチームのほうが、リモートワークという新しい環境変化にうまく適応できていたことがわかっています。振り返りをきちんと実施し、知見に変える意識を持つとよいでしょう」(村瀬氏)
これからの時代、事業環境は今まで以上に速いスピードで変化していくとされている。「リーダーとメンバーが協力し、生成AIに限らない、如何なる変化にも対応できるチームを作らなければなりません」という言葉で、村瀬氏の講演は終了した。