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組織戦略としてのデータとCX

デジタル庁樫田氏に聞く、データ分析組織にとって大切な「構造理解と融和的な振る舞い」とは

【前編】ゲスト:デジタル庁 Head of Unit, Fact & Data 樫田光氏

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既存の仕組みの背景にある構造を理解し、融和的に振る舞う

──大規模な組織でデータ分析などの新規組織を立ち上げる場合、既存の部門との調整や軋轢なども発生することがあると思います。

 データ分析などはじめ、スタートアップが得意とする手法を大企業が学ぶべきだという風潮があるようにも感じますが、当然ながら、組織の歴史や規模が違うので、適用できない部分もあります。例えば、大企業は利用しているツールも古くスピード感も遅いのですが、細かく見ればそれぞれ経緯や背景があります。僕が仕事をしている政府機関なども例に漏れず、組織内部にはいくつもの面倒なプロセスがあります。ところが、組織の規模や経緯をきちんと理解していくと、そうならざるをえない理由があると分かります。それを理解せずに「大企業はスタートアップに対して遅れている」「スタートアップの手法を導入すれば良くなるはずだ」と単純に考えるのは危険です。

 大きな組織を変えていくためのキーワードは「融和」ではないかなと思っています。既存組織が持つ一見不合理に見える行動基準の背後には、今の形になった何かしらの理由が必ずあります。大企業は変化のスピードは遅いですが、スタートアップとは桁違いの利益を稼げてもいることも事実です。ということは既存の仕組みが何かしらの機能を果たしている可能性も大いにあるわけです。その機能を理解しないままに、既存のものを完全に取っ払って、まったく別のものに付け替えても、うまくいかないことの方が多い。丁寧に分析したうえで新しいことを始めることは組織を変える一歩につながりますが、既存の構造を理解せずに、ただただ新しいものを始めるのとは違います。

 現在の構造を理解しようと考えれば、おのずから融和的な態度になるはずです。そのうえで、既存の仕組みに沿うような行動をしようと思えば、自分たちの専門性を好き勝手に発揮しようとは考えません。既存の構造をリバースエンジニアリングし、それに沿った行動を設計し、その行動の妥当性についてチーム内外の人たちと合意する。そして、その方向に向くようなデザインを作り、指針が正しかったと証明する。そのレールの上に新しい文化や新しい技術を投入していって、はじめて変革がうまくいく可能性が芽生えてきます。

樫田光

既存の仕組みに対するリスペクトと配慮

──大規模組織を変えていく際にすごく重要なポイントですね。具体的にお聞かせください。

 大規模組織の既存の仕組みは複雑で、複数の要素が絡まり合ってできています。何か単一のものとしては存在していません。

 例えば、データドリブン経営を実践しようとしている、とある企業を想定しましょう。スタート地点の「データドリブンではない」という事象は、「一族経営だ」「フランチャイズの店舗が多い」「代理店ビジネスなので直接的な顧客接点のデータが取りづらい」など、複数の要素と綿密に絡まり合っています。例えばフランチャイズという形態は、従来の営業体制やビジネスモデル、あるいは地域性に適していると分かったとします。そうすると、ある一つの要素だけ抜き出してすげ替えるということはできません。

 既存の仕組みに対するリスペクトと配慮は組織を変えていこうとする場合に特に重要です。少しずつ構造を理解して、どこがポイントで全体を解きほぐせるのかを理解する必要があります。当然、全体を解きほぐす糸を引ける人間は限られています。その人に信頼されるまでは、既存の仕組みに寄り添いながら、成果を出して信頼を獲得するのがよい戦略でしょう。

 先の例でいえば、フランチャイズをやめるか否かは、社長が判断することです。社長に提言するためには、既存の枠組みの中で成果を出して信頼を築く必要があります。下積みが必要なのです。

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大規模組織で変革を可能にする「タイミングと人」とは

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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