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Biz/Zineセミナーレポート

なぜ人はオフィスワーク復帰を拒むのか──感情と心理的反発というイノベーションの阻害要因の克服とは?

講演者:IDEO Tokyo 田仲薫氏、ノースウェスタン大学・ケロッグ経営大学院 /D4V デイヴィッド・ションタル氏【後編】

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 2023年7月12日、米国トップのビジネススクールのノースウェスタン大学・ケロッグ経営大学院 教授であり、D4Vのグローバル・アドバイザーを務めるデイヴィッド・ションタル氏の講演イベントがIDEO Tokyoで開催された。イノベーションを阻む抵抗の4つの種類、そしてその解消方法に関して、具体例を用いて著者が直々に語った。またIDEO Tokyoでマネジング・ディレクターを務める田仲薫氏が、IDEOでの豊富な実例の一端を紹介した。イノベーションや変化をもたらすことを目指す人々は、どんな抵抗を想定するべきなのか、反対にあった際にはどういった工夫をすればよいのか。これからのイノベーターが得るべきヒントを探る。

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“感情からくる抵抗”は表に出てこない

 前編でも紹介したとおり、ションタル氏は抵抗には4つの要因があるという。1つ目は「惰性」であり、2つ目は「労力」だ。本稿では、3つ目の要因の「感情」と、特に米国で強く見られる「心理的反発」を紹介する。

 ションタル氏によれば、変化を促された人は、不安や恐怖、あるいは面倒だと思う気持ちを必ず経験する。しかしながら、感情による抵抗は目に見えにくい。特に米国では、上司に対してネガティブな感情を口にする人は珍しいという。そのため、感情による抵抗を見つけるには、個々人から話を引き出す必要があるのだという。

安くて簡単で美味しいケーキミックスが売れない理由

 感情からくる抵抗の例としてションタル氏がピックアップしたのは、ケーキミックスの事例だ。ケーキミックスの発明は、1920年代にさかのぼる。当時のケーキミックスは、すべての材料が事前に混ぜられており、水を加え、混ぜてオーブンに入れるだけで素晴らしい味のケーキができるという触れ込みだった。実際、味も素晴らしく、アンケートを採ると9人に8人が、ケーキミックスで作ったケーキの方が手作りのものよりも美味しいと答えている。しかも、ケーキミックスを使えば、必要な個々の材料を個別に買うよりもかなり安い。

 これだけ素晴らしい商品なので、飛ぶように売れるかと思われたが、実際には初期の売上は低調だった。簡単に、安く、美味しいケーキが作れるのに、なぜ人気が出なかったのだろうか。

 潜在的な顧客に調査を行ったところ、問題は、ケーキを焼くのを簡単にしすぎていたことらしいと分かってきた。私たちは、他の人に対して愛や感謝の気持ちを示すためにケーキを焼く。そこでは労力をかけて手作りをしたという事実が重要だ。しかし、粉に水を加えてかき混ぜ、オーブンに入れるだけでは、もはや手作りのケーキなのか、それともケーキを買ってきてただ温めているだけなのか、違いが分からない。

 調査の結果、粉末卵を入れるのをやめることになった。消費者にとっては、自分で卵を割って入れるという追加のプロセスができるようになった。このおかげで、消費者たちは自分たちがケーキを手作りしていると感じることができるようになり、ケーキミックスの売れ行きは急激に良くなった。

ケーキミックス

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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