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オープンイノベーションとCVCの実践者

東芝テック流オープンイノベーションの進め方──執行役員とCVC責任者のペアによる事業変革とは?

【前編】東芝テック株式会社 執行役員 新規事業戦略部長 平等弘二氏、CVC推進室長 鳥井敦氏

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 近年、大手企業によるCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立が続いている。本連載では、その成功のために大企業内で社内外をつなぐ「ポリネーター」が果たす役割に注目し、各企業でのキープレイヤーにインタビューを行ってきた。今回はPOSシステムのリーディングカンパニーとして知られる東芝テック株式会社の平等弘二氏(執行役員 新規事業戦略部長)および鳥井敦氏(新規事業戦略部 CVC推進室長)にお話を聞いた。聞き手は『企業進化を加速する「ポリネーター」の行動原則 スタートアップ×伝統企業』(中垣 徹二郎・加藤 雅則 著、根来 龍之 監修 日経BP)の主著者である中垣徹二郎氏。前編となる本稿では、CVCの導入の経緯、新規事業と既存事業をブリッジする「ポリネーター」の役割について、そしてCVCを通じてのカルチャー、既存組織の変革について話が及んだ。

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既存事業をとりまく環境変化から新規事業を決断

──まずは東芝テックの売上構成に関してお聞きできればと思います。

平等弘二氏(以下、敬称略):東芝テックには大きく分けて二つの事業があります。リテールソリューション事業とワークプレイスソリューションの事業です。前者のリテールソリューション事業は、POSシステムの企画・開発・製造・販売をしており、後者のワークプレイスソリューション事業はコピー、FAX、プリンタなどの機能が一つに組み込まれた複合機のビジネスを同様にしています。

 リテールソリューション事業の従来モデルは、ハードウェアの販売を中心に利益を稼ぐものでした。社会情勢やテクノロジーの進化に沿う形でソフトウェアの強化にも注力しています。しかし、POSや周辺機器のハードウェアが専用機器からタブレット等のスマートデバイス対応が可能になり、コモディティ化してきたことにより、他のPOSシステムを取り扱う企業との差別化が必要になってきました。社会や事業環境の変化の後押しもあり、新規事業の議論が本格化しました。

 私が当時いたリテールソリューション事業本部の中でも新規事業に携わる機会がありましたが、既存事業の中で新規事業推進のために準備していたリソースは、どうしても利益に繋がりやすい本丸の既存事業へと流れてしまいます。結果、既存事業に近い分野、延長上にある「新規サービス」は具現化出来ますが、少し離れた「新規事業」という領域は後手になってしまっていました。

平等弘二
東芝テック株式会社 執行役員 新規事業戦略部長 平等弘二氏

既存事業の中では後まわしになる領域でも新規事業を創る

──では、いわゆる「飛び地」と言われるような領域での新規事業にはどのように取り組んだのでしょうか。

平等:そこで、現社長の錦織(代表取締役社長 錦織弘信氏)が、人も予算も事業部とは切り離し、社長直轄の組織を作る決断をしました。そうした経緯で2021年4月に生まれたのが新規事業戦略部です。

 そのときに、すでに2年前から経営企画室で動き始めていたCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)部門も統合しました。他にも、データサービスの部署と「スマートレシート」(東芝テックが開発・運営する電子レシートサービス)を推進する部署を統合するなど、新しいビジネスの創造をしやすい環境を整えました。現在、新規事業戦略部には、新規事業を社内で創出するビジネスインキュベーションと、CVCを中心としたオープンイノベーションという、二つの軸があります。

中垣徹二郎氏(以下、敬称略):新規事業やCVCに取り組む企業は多いですが、その中でもCVCと新規事業とがセットでない企業もあります。既存領域の周辺をいわば囲い込むために資本を利用することも可能です。東芝テックさんでは、二つの軸を持ち、一方では自分たちで事業を創出し、もう一方では自分たちにない事業に取り組むために、あるいは長期的なシナジーを目指して、少し離れたところに進出するという戦略を立てられ、CVCという手法を選ばれているということでしょうか。

鳥井敦氏(以下、敬称略):そうですね。だからこそ、POSシステムや複合機の事業を中心としていますが、ソリューションとしてはリテール向けのHRソリューションなど、少し離れたものも扱っています。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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