“トヨタ自動車初”を積み重ねる土井氏のキャリア
──まずは土井さんのご経歴を教えてください。
土井雄介氏(以下、土井):私は静岡生まれで、2015年に東京工業大学大学院を卒業後、トヨタ自動車に入社しました。大学では金属について研究していたのですが、自分よりも熱量を持って研究に取り組む、優秀な人たちの存在を知りました。さらに、在学中は研究をビジネスにつなげることが課題だと感じていたこともあり、研究職でなくコンサルやベンチャーへの就職を志望していました。
そんなときトヨタ自動車のリクルーターから、企業精神として根付く「産業報国」について話を聞く機会がありました。「自分や会社のためということを超えて、国や社会のためとなること」という部分に感銘を受けて、内定していた企業を辞退して、トヨタ自動車への入社を決めたという経緯があります。
最初の配属では、トヨタ自動車が大きく成長した要因を知りたい気持ちがあり、物流改善支援業務(カイゼン)に従事しました。その頃、同期を集めて飲み会をたくさん開催する中で、みんな強い想いを持っているにもかかわらず、それを組織として生かしきれていないことも実感しました。そこで、トヨタ自動車社員の想いを実現するきっかけを作るビジネスコンテスト「A-1コンテスト」を有志で立ち上げました。
A-1コンテストや社外のハッカソンなどで20本以上の企画を実現しているうちに、社内活動として認められ、その後は役員付き特命担当として、新規事業やDX戦略を実施する業務に携わるようになります。並行して、トヨタ自動車の未来に向けた風土作りと新規事業とは相性がいいと感じ、社内新規事業提案制度を有志メンバーが立ち上げそこに自身がプレーヤーとして2年連続で事業化採択案に選出される経験も得ましたが、予算が付いてもなかなか事業化しないことにジレンマを感じていました。
そこで出会ったのが、「新規事業に型がある」と提案していたアルファドライブでした。“型”や“標準”という考え方には、カイゼンの仕事をしていた私としては非常に共感するところがあって、元々トヨタ自動車にあった社外出向制度をアップデートする形で活用して2020年、社内初のベンチャー出向を実現し、アルファドライブに参画しました。
アルファドライブでは、多数の新規事業の制度設計や伴走支援を実施。トヨタ自動車に帰任した後は、社内から事業を生み出す仕組み作りを担当してきました。その過程で、社会課題が複雑性を増す中、1社だけでは解決できないことが多いと感じ、「オープンイノベーション」という手法を通して、複数企業の協業支援を行うユニッジを共同創業しました。
アルファドライブの子会社であるユニッジもまた、“型”や“仕組み”を大事にしています。「協業の科学」による新規事業の成功確率を上げ、日本における越境での価値創出に向き合うことがミッションです。組織を超えた価値創出に向き合ってきた者として、大企業やスタートアップはもちろん、他の色んな挑戦者との間にも入って、お役に立てるのではないかと考えています。