顧客が自由に生成AIを活用可能に。オープンエコシステムの道を選択したZoomの哲学
最初に登場したのは、Zoomの創業者であり最高経営責任者のエリック・ユアン氏。同氏は、「ここ数年、私たちは想定外の事態を立て続けに経験し、世界の変化スピードはどんどん速くなっている。それに伴い、人々が一度にこなさなければならない仕事の量も増え続けている。そんな状況を解決するのが、Zoomのサービスだ」と語る。
これまで、ユーザーの課題解決に向けた開発と挑戦を繰り返してきたというZoom。従業員のダイナミクス改善や、顧客とのコラボレーション改善、そして近年では、生成AIの活用にも注力している。
活動は、単なるサービスの改善に留まらない。Zoomは、ここ最近でリモートワーク中心の働き方を改め、週に2日はオフィスに出社する方針を打ち出した。ユアン氏は、その意図を「出社とリモートを組み合わせるハイブリッドな仕事環境を構築する方法を示す実例になるためだ」と説明した。
「もちろん、Zoomはこれまでも場所や時間を問わないハイブリッドでのコラボレーションやソリューションのために使われてきました。しかし、ハイブリッドワークそのものの在り方も進化してきています。ですから、私たちも皆さんと同じ立場になって考える必要があったのです。従業員が感じる孤独や孤立感、通勤する価値を感じられないような対面での体験、リモート体制によってチームやシステム全体で縦割り構造が拡大していることなどを、私たちも実際に肌で感じてみなければいけないと考えたのです」(ユアン氏)
こうして得られた課題を解決する手段として、Zoomは生成AIに可能性を見出した。ユアン氏は、同社の生成AIへのアプローチを「Federate(連合する)」という言葉で表現した。Zoom独自の機能と、OpenAIやAnthropicといったAIスタートアップの技術・サービスを動的に組み合わせることにより、質の高いユーザー体験を提供するという考え方だ。
ユーザーは、自分がどのサービスを選ぶべきかを考える必要なく、Zoomが一人ひとりに対し、動的に必要な機能を提供する。また、既に支払っているZoomのライセンス料のみで、ユーザー企業の社員が生成AIの機能を使うことができるという。そして、プライバシーとコントロールを最大限守るために、生成AI機能を利用するかどうかは顧客が自身で選択できる上、顧客データをAI学習に使うことは一切ないことも明らかにした。
「顧客自身が必要なソフトやアプリを選んでZoomに統合できるオープンエコシステムによって、顧客の成功をサポートする。それがZoomの哲学なのだ」と、ユアン氏は強調した。