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「両利きの経営」を伝統的企業が成功させる鍵は、スタートアップ事業の買収とグロースによる組織能力の獲得

【後編】森・濱田松本法律事務所 パートナー 増島雅和氏

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起業家がM&A後も事業でビジョンを実現するために

──前編では伝統的な大企業のスタートアップ買収における課題を伺いましたが、一方で、スタートアップ側の課題や問題点はありますか。

中垣徹二郎氏(以下、敬称略):M&Aに対する想像力が足りていないことは、ままあるかなと思います。日本の場合、多くの起業家は「初めてのオンパレード」なんです。起業も初めて、VCからの資金調達も初めて、IPOやM&Aも初めてと。なので、仕方のない面はあるのですが、VCから投資を受けるのと、大企業に買収されるのを同じものと捉えがちです。言い換えると「買収先を信じたくなる」というか。VCはスタートアップを成長させてキャピタルゲインを得るのが仕事ですから、いろいろと親身になって起業家をサポートします。しかし、大企業に買収されたあとに同じような対応をしてもらえるかといえば、そんな保証はないわけです。

 だから、スタートアップ側は買収金額だけに注意を向けるのではなく、買収後の対応や条件を確認して、調整しながら交渉を進めていく必要があります。例えば、買収後に10億円の追加投資が見込まれるのであれば、相手先にしっかり伝えて事前に根回しをしておく。自ら生み出したサービスを世に出すために必要な仕事だと捉えて、真摯に取り組むべきです。実際に、買収されたのちに親会社から思うような支援が受けられず後悔している起業家に何度も出会ったことがあるので、余計にそう思いますね。

増島雅和氏(以下、敬称略):事前の交渉は極めて重要ですね。そもそも、なぜ事業を売却するのかといえば「ビジョンの実現に繋がるから」です。スタートアップの事業とは、ビジョンを実現するための手段のはずですから。だとすれば、M&Aの交渉にも「どんな条件なら買収後により事業を成長させられるか」という観点でのぞむべきですよね。

 そのため、昨年出版した『スタートアップ買収の実務 成功するオープンイノベーションのための戦略投資』(以下、本書)でも、「LOI(基本合意書)の協議に大きなリソースを割いて、粘り強く交渉しましょう」と記しました。日本の大企業は、良くも悪くもですが、LOIに忠実なので事前に合意したことが最終契約まで維持されることが多いです。だから、LOIを後回しにしたり、曖昧な条件で合意したりするのは絶対に避けたほうがいい。

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中垣:買収後の話でいうと、親会社との窓口役をいかに作るかも重要ですね。以前、聞いた話なのですが、ある起業家が大企業に買収される際に窓口をしていた担当者が、買収後に担当役員として参画してPMIの責任者も担ってくれたと。これがすごく心強かったと言ってました。大企業にはスタートアップとは大きく異なる文化や作法がありますから、そこに馴染めない起業家は多い。しかし、その起業家の場合は、買収前から自社のことを知っている担当者が、買収後にも親会社との窓口役を担ってくれたことで、かなり負担が減ったらしいです。

増島:それは翻って、「大企業はどんな人物をスタートアップ買収の窓口にするべきか」という話でもありますよね。やはり、イノベーションに通じていて、大企業とスタートアップの間を取り持てる人材でなければ、スタートアップ買収は担当できないのでしょう。それが中垣さんのいう「ポリネーター」なのだと思います。前編でもお話しましたが、だからこそ大企業はイノベーションの専任部門を設けて、既存事業とは異なるアプローチでスタートアップ買収にのぞむべきだと思うんですよね。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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