解決すべき課題は何か、着眼点から把握する
共感マップで情報が整理され、チームでユーザーのキャラクターを共有した後は、解決すべき課題を設定するための「着眼点」を見出す。優れた着眼点は、ユーザーが抱えていた問題を「探求すべき機会」に変えるきっかけとなり、次のステップである「アイデア創造」をより効果的に進めることを可能にする。
着眼点は次の3つの要素で構成される。「ユーザー」、「ニーズ」、そして「インサイト」だ。
『[ユーザー]は[ユーザーのニーズ]する方法が必要だった。なぜなら[(驚くべき)インサイト]だから』という文章の穴埋めを行い、1つの問題定義文を完成させることがゴールになる。
以下の手順で作成しよう。
- ホワイトボードや紙を用意し、「ユーザー」「ニーズ」「インサイト」の3エリアに分割する
- 共感マップや作成したキャラクターを参照しながら、各エリアについていくつか候補を書き出す(ポスト・イットを利用)
- 候補を組み合わせながら、もっとも探求する価値のあるユーザー課題を見出す
たとえば、新しく高校に入学した女子生徒を対象にした観察やインタビューの結果は、以下のようなものだった。
発言:「健康食品に関心がある」
行動:「ジャンクフードを友達と楽しそうに食べている」
現場調査を踏まえた結果、問題定義文はこうなった。
「将来が不安な高校1年生の女子は、健康食品を食べることで社会とのつながりを感じたがっている。なぜなら、彼女たちは健康リスクよりも社会的リスクに不安を抱いているからだ」。ここで言う社会的リスクとは「友達の輪から外されること」である。
重要なのは、インサイトだけ抽出しようとしても意味がない、という点だ。その人が誰なのか(普段どんな行動をとっているのか?)、その人が欲していることは何か(どんなニーズを持っているのか?)といった、ユーザー自身とユーザーを取り巻く環境(前後の文脈)がわからなければ意味あるインサイトは導き出せない。
解決すべき課題を点ではなく、線で見れるかどうかがポイントになる。一連のワークを通じて、ユーザーにより深く共感し、真に解決すべき課題をチームで明らかにしよう。
本稿内の出典・参考文献は以下にまとめます。
- スタンフォード大学d.school 『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』一般社団法人デザイン思考研究所編
- 一般社団法人デザイン思考研究所 『デザイン思考入門コース』 スライド資料