観光・災害対策など、モバイル空間統計の多彩な活用シーン②
──では、モバイル空間統計の実際の活用事例をお聞かせいただけますか。
一つは、とあるサッカースタジアム分析の事例です。この事例での活用方法は、アプリ会員獲得のためのタッチポイントの把握でした。以前、試合会場のサッカースタジアムでアプリ会員獲得の施策を展開していたのですが、観客の多くは試合を楽しみにしているため、チームのファンであったとしても会員登録のモチベーションはそれほど高くありません。そのため、アプリ会員数が伸び悩んでおり、スタジアム以外の場所での会員獲得が急務になりました。

このときに役立ったのがモバイル空間統計です。具体的には、モバイル空間統計でスタジアムの来場者が他の休日にどのエリアを訪れているのか分析したのです。その結果、このスタジアムに隣接、もしくは乗り換えで使用するターミナル駅などの商業施設に集中していることが判明しました。この分析をもとに、これらの場所でプロモーションを実施したところ、過去に例を見ないほどアプリ会員を獲得できたと聞いています。このように、ある特定の場所に集まった人々が、普段はどのエリアに滞在しているのかを分析する際などに、モバイル空間統計は活用いただけます。
──自社の顧客層をより深掘りして分析できるわけですね。そのほかの事例はいかがでしょうか。
マーケティングやプロモーションのほかにも、自治体の防災や事故防止などにも利用されています。その一つが、びわこビジターズビューローによる琵琶湖の花火大会での活用事例です。この事例では、花火大会会場における交通規制に活用されました。

しばしば報道されるように、花火大会などの大規模イベントでの混雑は、雑踏事故の要因になります。そのため、大規模イベントを開催する際には、主催の自治体などが事前に混雑状況を予測し、人流が滞留しそうな地点に警備員を配置したり、通行を規制したりといった対策を行います。
こうした対策を講じる際に、モバイル空間統計が効果的です。会場付近の混雑状況や時間帯ごとの通行量の増減、普段の日との通行量の差、人流が滞留しがちな地点など、特定エリア内の状況を多角的に分析できるため、最適な人員配置や適切な事故防止策が可能になります。
──会場周辺の人の流れがわかるということは、イベントを活性化する施策にも使えそうです。
もちろんです。例えば、さきほどのサッカースタジアムの事例のように来場者の居住エリアなどを分析すれば、近隣住民のほかにどんな地域から人が訪れているのか把握できます。それがわかればイベントのプロモーション施策は展開しやすいでしょうし、より多くの来場者が期待できると思います。
自治体が大規模イベントを開催する際の目的の一つは経済効果です。より大きな経済効果を生むためには、遠方からの来場者をいかに増やすかがポイントですから、そうした用途でモバイル空間統計を活用するのもおすすめですね。