ドコモだから可能になる、高精度の人口統計サービス
──まずは「モバイル空間統計」のサービス概要と開発経緯をお聞かせください。
「モバイル空間統計」は、ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを利用して、人口を推計するサービスです。ドコモ契約の国内約8,900万台(2024年3月実績)、訪日外国人約1,200万台(2019年実績)の携帯電話を集計し、地域ごとのドコモの普及率を加味して、人口を推計しています。特定エリア内の時間帯ごとの人口を把握できるほか、性別、年代、居住エリア、国・地域など、さまざまな属性情報を可視化できます。サービスのユーザーは幅広く、企業から自治体まで多くのお客様にご利用いただいています。
サービスのスタートは2013年10月です。もともとはドコモの新規事業の一つとして2000年代後半に研究開発が始まったのですが、携帯電話ユーザーの個人情報保護を徹底するためガイドラインやデータ処理手法の整備に力を入れました。さらに、国や有識者との入念な議論を重ね、約5年間をかけてサービスリリースに至っています。
──人口や人流のデータを提供する競合サービスは少なくありません。モバイル空間統計の強みはなんでしょうか。
一番の強みは、ドコモの携帯電話ネットワークを利用したデータ収集の仕組みです。携帯電話を繋ぐ仕組みのなかで全ユーザーの運用データ(位置データおよび属性データなど)が発生・蓄積されます。そのため、携帯電話の電源がオンになっているだけで、国内のユーザーであれば性別、年代や居住エリアなどを収集できますし、国際ローミングの技術を活用し、訪日外国人の人口や国別番号から国・地域別人口を把握できます。
一方で、基地局ではなくGPSを用いる手法も存在します。しかし、その場合にはGPSがオンになったときのみデータが収集されるため、統計結果が偏る可能性が高いです。実際に、携帯電話のGPSを常にオンにしている方は少ないのではないでしょうか。おそらく、GPSをオンにするのは、特定のアプリを利用するときだけという方が多いように思います。そのため、GPSでデータを収集すると、コンビニエンスストアや駅など、何らかのアプリを起動する場所に人口が偏りがちです。また、近年はOSの制約で位置情報取得が厳しくなっています。こうしたとことから、圧倒的なサンプル数のデータを常時収集し、精度高く分析できる仕組みこそ、モバイル空間統計の強みだと考えています。
──たしかに、全国各地に基地局を設置しているのはドコモのほかには数社程度ですね。
はい。それらの基地局の一局ごとに独自のデータ収集の仕掛けを施し、かつ安定的に運用するための整備体制を確立しているのは、ドコモのほかにそう多くないはずです。その意味では、国内でも極めて希少な人口統計情報サービスだと思います。
──これらの特徴や機能が評価され、さまざまな受賞歴があるんですよね。
そうですね。ありがたいことに情報通信や放送に関する「前島密賞」、科学技術に関する研究開発、理解増進に関する「文部科学大臣表彰」をはじめ、他に以下のよう受賞歴があります。