IMS導入を加速する取り組みと新たな挑戦
イベント終盤では、JINが提供するIMSアクセラレーションプログラム(IMSAP)の詳細の解説もあった。
登壇したJIN理事の仙石氏は冒頭、かつて日本企業の競争力を世界で高めたのが品質管理経営システム(QMS)の導入だったように、今こそイノベーション・マネジメントをシステムとして取り入れることが重要だと指摘。その際、IMSを効果的に機能させるためには、専門人材の育成が不可欠だと強調した。
そうしたニーズに答えるIMSAPは、組織がIMSを効果的に導入し、変革を実現するために設計された包括的プログラムである。
まず、IMSやISO56001についての基礎知識を「Studio」で学んだ参加者は、「CAMP I」で、組織の現状分析(アセスメント)を行う。この段階でJINが提供する評価基準は、単にISOに沿ったチェックリストではなく、企業固有の課題を浮き彫りにし、共有するためのツールとなっている。
既存ビジネスモデルの限界や新規参入者との競争、利益性の低下など、企業が直面する課題について認識を共有するこのフェーズでは、詳細な分析を通じて、世代間や職位間での認識の差を確認、どういった要素が自社にとって特徴的な課題かを明確にする。
続く「CAMP II」では、イノベーションの動機・意図を明確にし、不確実性に対応しながら自社の資産や提供価値に基づいた新規事業や変革を行うためのスコープやポートフォリオを構築する。突飛なアイデアではなく、シナリオや戦略に沿った創発的なイノベーションのアイデアを生み出すための準備として位置づけられるだろう。
最後の「CAMP III」では、IMSの具体的な実装支援を行う。イノベーション活動のプロセスや支援体制の構築を中心に、実践的なアプローチを通じて組織の変革を促進していくフェーズだ。これには教育やIMSの浸透を把握する継続的モニタリングなどが含まれる。
さらに、JINは企業向けシステムだけでなくそこでの実践人材のための教育プログラムの展開も開始している。これはIMSを支えるIMPの育成を指す。当然、フレームワークや仕組みだけではイノベーションを生み出すことはできず、システム、イノベーター、そしてそれを支えるイノベーション・マネジメント・プロフェッショナル(IMP)が連携して初めて価値創造が可能になる、と仙石氏は語る。
このプログラムでは、JIN独自開発の教材やスウェーデンのAmplify社が提供するIMP向けのシステマティック・イノベーション・マネジメントプログラムを活用し、参加者に体系的な知識と実践的なスキルを提供する。
たとえばAmplify社のプログラムは全14モジュールで構成され、イノベーションの定義や戦略立案から、組織文化の醸成、評価基準の構築などまで学ぶことが可能だ。参加者は動画視聴やクイズを通じた知識習得に加え、全5回のワークショップ形式で実践的なトレーニングを受けることができる。プログラムでは、参加企業が議論や意見交換を通じて相互学習や交流を深める場も提供される予定だ。
JINでは今後もこういった啓蒙や普及のためのイベントを特定のテーマ(環境イノベーション)や業界(建設・都市、地域創生)などに向けても行っていく予定だという。