生成AIを経営変革につなげるポイント
これまで、生成AIを業務に活用するためのステップを見てきたが、さらに先の経営変革にまでつなげるためには、どのような順序を踏めばよいのか。馬渕氏はその道筋を、4つのフェーズに分けて説明した。
最初の導入フェーズでは、外部オープンソースデータを活用した生成AIの利用を開始する。次の最適化フェーズでは、LLMにRAG(検索拡張生成)を組み合わせることで、業界固有データや社内文書データの検索を行うようになり、続く統合フェーズでは、事業やプロダクトにもAIを埋め込み、社内のビッグデータをもとに社内のプロセスを一貫して効率化する。そして最後は、AIを活用して新たなビジネスモデルやサービス、製品を生み出す変革フェーズに至るというのが、馬渕氏の考えだ。そして、現時点では日本企業の多くが導入フェーズや最適化フェーズに止まっているため、今後の課題は統合フェーズになるだろうと推測する。
岡田氏はここで、フェーズが上がるごとに推進主体のレベルも上がる構造に気づき、その意味を馬渕氏に問うた。馬渕氏は前提として、生成AIを活用するには、いきなり経営層からのトップダウンで大きな投資をしてすべてのプロセスを生成AIに変えるのではなく、まずは現場レベルで業務の一部に少しずつ生成AIを取り入れて使ってみるのが大切だという考えを示した。PoCを繰り返しながら成功体験を積み、自信が出てきた段階で活用範囲を広げ、さらなる投資をしていく。その過程で、推進主体のレベルも自然に上がっていくのだという。
岡田氏はもう1点、フェーズの移行にともない、適用技術も変化することに注目。その対応ポイントについて金氏に意見を求めた。ところが、金氏によれば、各フェーズにおいて基本のLLM自体の差分はさほどないとのこと。むしろオープンソースからクローズドなデータに切り替わる際のデータの質が勝負だという。
とはいえ、「自社データがないため、まずはデータ作りから開始する」というアプローチは誤りだと指摘したのが馬渕氏だ。いきなり大きなデータベースを作ろうとすると、要件定義だけで何ヶ月もかかる。ひとまず現状で存在するデータから活用を開始し、そのプロセスの中でどのようなデータが必要かを考えていく、「アジャイル型」の進め方が最適だと、馬渕氏は主張する。