NTTデータ経営研究所は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に「令和のキャリアプラン実態調査-キャリア形成とリスキリングの現在地-」を実施した。
同調査は、令和時代に働く人々のキャリアプランや企業のキャリア形成支援施策(以下、キャリア施策)の実施状況、個人によるリスキリング状況を明らかにし、今後のキャリア施策の在り方を議論する上での土台となることを目的としているという。調査の結果、企業規模や雇用形態、役職、年収などの属性によってキャリア施策の認知・活用状況に差があり、将来のスキル需要と乖離したリスキリングが行われている実態が明らかになったとのことだ。

主な調査結果は次のとおり。
1.キャリア施策、過半数が認知も活用は1割強─4人に1人は「必要ない」と回答
正社員(N=840)を対象に、企業が導入する主要なキャリア施策(12項目)の実施状況、認知度、利用度、満足度、必要性の認識について調査。その結果、「キャリア施策を認知している」と回答した人は全体の53.4%と過半数を占めたが、実際に「利用している」と回答した人は11.9%にとどまり、活用の広がりには課題があることが明らかになった。また、施策利用者の評価では、すべての施策で「低評価」が「高評価」を上回る傾向が見られ、満足度の低さが際立った。
キャリア施策の必要性について「どの施策にも必要性を感じない」と回答した人は25.2%にのぼり、キャリア支援に対する低関心層が一定数存在することがわかった。

正社員におけるキャリア形成支援施策の認知度/利用度/必要性の認識」(N=840)
2.キャリア転換の意向、係長以上で7割超・年収500万円以上で5割─職責・収入が意向に影響
正社員を対象に、キャリア転換の意向(例:社内での役職・職種変更、社外転職、雇用形態や勤務地の変更など全7項目)を役職別・年収別に分析した結果、職位や収入の上昇に伴ってその意向が高まる傾向が確認された。
具体的には、役職別では係長クラス以上の各層でいずれも70%以上が転換を想定しており、主任・リーダークラスは51.0%、役職なしは24.4%にとどまった。年収別では、500万円以上の層で約50%が転換を想定していたのに対し、500万円未満の層では17.8~38.6%にとどまり、10ポイント以上の差があった。これらの結果から、一定の職責や経済的余裕を持つ層ほど、自律的かつ前向きにキャリアを再設計しようとする意向が高いことが示唆された。

正社員におけるキャリア転換傾向(役職・年収別、N=840)
3.リスキリング実施率に属性差─正社員34.9%、契約社員22.7% 非デジタル領域に偏重
正社員および契約社員(N=132)を対象に、12スキル領域別のリスキリング実施状況を分析した結果、「取り組んでいる」と回答した割合は正社員で34.9%、契約社員では22.7%にとどまり、雇用形態による実施率に差があることが明らかになった。さらに正社員の中でも、役職なし(最も高い層との差:24.7ポイント)、従業員規模300人未満(同22.9ポイント)の企業、年収200万円未満(同37.1ポイント)の層において、特に実施率が低い傾向が見られた。
中でもDX推進に不可欠な「デジタル・ITスキル」(AI、ビッグデータ、セキュリティ、プログラミングなど)への取り組みは、正社員で18.6%、契約社員では9.1%にとどまり、非デジタル領域(正社員34.2%、契約社員22.0%)と比べて半分以下の水準となった。特に正社員の50代では、デジタル・ITスキルの実施率が10%未満であり、世代間でも大きな差が生じていることが確認された。
また、実際に進められているリスキリングは「自己開発」「作業・技巧」「メンタル・適応」「リーダーシップ」など非デジタル領域に偏っており、将来のスキル需要とのギャップが生じている実態が浮き彫りとなった。

正社員(N=840)および契約社員(N=132)のリスキリングの実施状況
調査概要
- 調査名:令和のキャリアプラン実態調査-キャリア形成とリスキリングの現在地-
- 調査期間:2024年7月23日~2024年7月26日
- 調査方法:非公開型インターネットアンケート(NTTコム リサーチ クローズド調査)
- 調査対象:就業中の20~60代以上の男女
- 調査機関/実施者:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社/株式会社NTTデータ経営研究所 組織・人材変革コンサルティング室
- 有効回答者数:1055人(男性:531、女性:524)
- 調査結果(詳細レポート):調査結果ダウンロードはこちら
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